薬物誘発性心毒性は依然として主要な懸念事項となっており,安全性に優れたプロファイルを有する医薬品の創出において,心血管系の機能的及び構造的変化の両面からの非臨床での統合的リスク評価が強く求められる.安全性薬理試験では全身血圧,心拍数,及び心電図が主な評価項目となっているが,ICH S7Aガイドラインで言及されている心拍出量及び心室収縮性などの直接的な心機能評価も望まれる.臨床病理及び病理組織学的検査などにより構造的変化を検出する一般毒性試験が重要であることは言うまでもないが,ヒトへの外挿性の高いトランスレーショナルバイオマーカーやメタボロミクス解析も有用な知見を与える.本稿では,カニクイザルを用いたホスホジエステラーゼⅢ阻害薬であるミルリノンの心臓への影響を検討した我々の研究を紹介するとともに,非臨床in vivo研究における統合的リスク評価の重要性を共有したい.