日本薬理学雑誌
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特集:若手研究者が切り拓く,男性泌尿生殖器疾患の最新研究
前立腺疾患による膀胱蓄尿機能障害の病態生理と薬物治療
相澤 直樹
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2022 年 157 巻 3 号 p. 164-167

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抄録

前立腺は男性の尿道を取り巻くように存在する腺組織である.代表的な疾患に前立腺肥大症があり,加齢とともに罹患率が増大することが知られている.我々はこれまで,前立腺肥大症のモデル動物である膀胱出口部部分閉塞のラットモデルを用いて検討してきた.その結果,筋原性由来の膀胱微小収縮の増大に伴って,膀胱求心性神経の活動が間歇的に増減していることを見出し,前立腺肥大症に伴う膀胱蓄尿機能障害,特に尿意切迫感の発生機序解明に寄与する可能性を示してきた.さらに,治療薬として上市されている薬物の薬理学的検討をすすめ,この病態に対する薬物治療において薬理作用の知見を集積してきた.また,前立腺炎も前立腺の代表的疾患に挙げられる.この中で,感染が確認されないにも関わらず,長期的に骨盤部の疼痛や不快感を有する場合,慢性非細菌性前立腺炎と診断され,前立腺炎患者の9割を占めるとも言われている.慢性非細菌性前立腺炎においても,膀胱蓄尿機能障害に起因する症状を訴える場合があり,この病態発生機序は解明されていない.我々は,起炎物質であるカラゲニンを用いて,慢性前立腺炎モデルラットを作成し検討してきたが,少なくとも膀胱求心性神経活動に及ぼす影響は限定的であった.このことから,慢性非細菌性前立腺炎でみられる膀胱蓄尿機能障害の背景には,前立腺肥大症のような別の疾患が関わっている可能性が示唆された.

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