2022 年 157 巻 4 号 p. 221-225
一酸化窒素(NO)-cGMP-PKG経路は肺動脈性肺高血圧症(PAH)の発症や進展に重要なシグナル経路である.NO-cGMP-PKG経路の調節異常により血管収縮の亢進,血管炎症,血栓形成が生じ,PAHへ進展することが知られている.NO-cGMP-PKG経路に作用点を持つPAH治療薬にはホスホジエステラーゼ5型(PDE5)阻害薬と可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬があり,PDE5阻害薬であるシルデナフィルやタダラフィルはcGMPを5’GMPへ分解する酵素であるPDE5を阻害することによりcGMPを貯留させ,血管平滑筋の弛緩,血管拡張をもたらす.またその作用はcGMPの上流シグナルとなるNOの産生量にも依存する.一方,sGC刺激薬リオシグアトはNO-sGC結合を安定化することにより,内因性NOに対するsGCの感受性を高める作用とともに,異なる結合部位を介してNOによる刺激がなくても直接sGCを刺激してcGMP生成を高めるという二面的な作用を有している.異なる薬物動態や薬力学的特性を持つこれら薬物の使い分けについてのエビデンスは乏しいが,PDE5阻害薬よりもsGC刺激薬への反応性が良いPAH患者群が存在する一方,その逆の反応性を示すPAH患者群があるかもしれない.本稿ではPAHにおけるNO-cGMP-PKG Axisの重要性,またPDE5阻害薬とsGC刺激薬の特徴と臨床試験から得られた知見について紹介する.