2022 年 157 巻 5 号 p. 340-344
免疫毒性を評価するため,動物実験による評価が利用されてはいるが,現在のところ,どのアッセイをどのように使用するかについてのコンセンサスはなく,in vitro法で化学的免疫毒性を検出するための経済協力開発機構(OECD:Organisation for Economic Co-operation and Development)試験ガイドライン(TG:Test Guideline)も存在しない.このような状況に動物実験の3Rsが相まって,2005年の欧州からのin vitro免疫毒性評価アプローチの提唱をもとに,東北大学大学院医学系研究科皮膚科 相場節也名誉教授らが,マルチイムノトックスアッセイ(MITA:Multi-ImmunoToxic Assay)を提案した.この案は,化学物質の免疫毒性を予測するために使用できる統合試験戦略の一例である.この戦略をOECDのTGに承認してもらうため,日本として5段階で目標達成に取り組んだ.①免疫毒性に関する3つの有害性発現経路(AOP:Adverse Outcome Pathway)を開発,②主に免疫抑制をカバーするin vitro免疫毒性アッセイの詳細な総説(DRP:Detailed Review Paper)を作成,③AOPに基づく試験法の開発,④開発された試験法のバリデーション研究が実施され,MITAを構成する試験法をTG化,⑤最終的に,TGを核として,他の情報も組み合わせたOECDの目指す“試験の実施と評価のための戦略的統合方式(IATA:Integrated Approaches to Testing and Assessment)”を開発.今後,この提案が実現し,新たな試験法が開発されるとともに,IATAを用いた免疫毒性評価に関する国際議論が活発化することを期待している.