敗血症は未だ先進国においても主要な死亡要因であり,特に低・中所得国での重症化率が高く世界的な課題である.近年,COVID-19を含む敗血症重症化因子の1つとして溶血に伴う遊離ヘモグロビン・ヘムの重要性が指摘され始めた.つまり,血管内・間質腔における過剰な溶血産物がdamage associated molecular patterns(DAMPs)として炎症を増幅すること,NO失活による血管収縮,フェントン反応を介したフリーラジカルによる組織障害等が病態増悪に関与するとされる.一方,現時点ではこれら敗血症時の溶血処理をターゲットとした治療は行われていないが,戦略は大きく2つに分けられる.1つは溶血毒性の中和を狙った薬剤・血漿タンパク質補充,他方は溶血処理を担うマクロファージの活性化である.これら重症化抑制戦略の探索は将来のパンデミック対策としても重要であり,現時点での知見・研究開発動向を中心に考察する.