日本薬理学雑誌
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特集:Damage-associated molecular patterns(DAMPs)の制御機構と創薬シーズへの応用
高ヒスチジン糖タンパク質のAnti-DAMPsとしての役割とDAMPs関連病態に対する治療効果
和氣 秀徳
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2022 年 157 巻 6 号 p. 426-428

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抄録

高ヒスチジン糖タンパク質(HRG)は主に肝臓で産生される血漿糖タンパク質である.我々は,代表的なダメージ関連分子パターン(DAMPs)の一つであるhigh mobility group box1(HMGB1)が病態進行に重要な役割を担っていることが知られている敗血症に対して,HRG補充療法が著明な治療効果を発揮することを明らかにした.その作用機序は,免疫血栓形成阻害や活性酸素産生阻害など多岐にわたる.加えて,HRGはDAMPsの一種であるヘムの毒性中和活性を有し,病原体関連分子パターン(PAMPs)の一種であるLPSの活性を中和すること,さらにHMGB1の血管内皮細胞核内から細胞外へのトランスロケーションを抑制すること等を明らかにした.これらの知見より,HRGはDAMPs/PAMPsの制御を行う血漿タンパク質であることが明らかとなった.DAMPs/PAMPsは敗血症のみならず,多くの炎症性疾患の病態進行に中心的役割を担っていることが知られているため,HRGの適応範囲は広く,創薬シーズとして非常に有望であると考えられる.

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