日本薬理学雑誌
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特集:AIを駆使した医薬品開発の現状について
データ駆動型ドラッグリポジショニングの現状
齊藤 隆太矢野 直子小島 真治三由 文彦
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2023 年 158 巻 1 号 p. 10-14

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抄録

創薬の難易度が上がる中,近年の医薬関連データの急速な拡大とAI技術の目覚ましい技術進展によって,データ駆動型ドラッグリポジショニングによる新薬開発のアプローチが注目を浴びている.データ駆動型ドラッグリポジショニングは薬物・遺伝子・疾患についての様々なプロファイルを活用して,体系的かつ戦略的に新しい適応症候補疾患を探索し,優先順位を付けていく手法であり,ここ数年で多くの研究成果が報告されている.ここでは,データ駆動型ドラッグリポジショニングの代表的な解析技術,①標的分子予測,②遺伝子発現変動プロファイル・トランスクリプトーム解析,③自然言語処理・分散表現,についての概要と現状を述べた後,実際に我々が検討したPPARγ/αアゴニスト・ネトグリタゾンの解析事例について紹介する.また,近年のデータ駆動型ドラッグリポジショニングの成功事例として,2020年にBenevolentAI社から発表された,JAK阻害薬・バリシチニブがCovid-19重症化に有効である可能性を示した解析事例についても紹介する.

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© 2023 公益社団法人 日本薬理学会
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