日本薬理学雑誌
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特集:若手研究者が切り開く神経変性疾患研究の最前線
PETによるアストログリオーシスの生体画像化
原田 龍一岡村 信行
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2023 年 158 巻 1 号 p. 26-29

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抄録

アストロサイト,オリゴデンドロサイト,ミクログリア,上衣細胞などのグリア細胞は,脳の恒常性維持に重要な役割を果たす非神経細胞である.しかし,活性化したミクログリアやアストロサイトは神経炎症を引き起こし,神経変性に密接に関与すると考えられている.多くの神経変性疾患の脳では,神経細胞脱落,神経炎症(グリオーシス),ミスフォールディングタンパク質の蓄積が共通して認められる.したがって,グリア細胞の反応性変化を陽電子断層撮影法(positron emission tomography:PET)により非侵襲的に画像化することができれば,病態プロセスの理解促進につながるだけでなく,早期診断やグリア細胞を標的とした疾患修飾薬の薬効評価などへの応用も期待できる.反応性アストロサイトの標準的なマーカーはglial fibrillary acidic protein(GFAP)であるが,特異的なリガンドが存在しない.反応性アストロサイトのPETプローブの結合標的としては,モノアミン酸化酵素B(MAO-B)とイミダゾリン2結合サイト(I2BS)の二つがある.近年,MAO-BおよびI2BSを標的としたPETプローブが開発され,臨床研究が進められている.本総説では反応性アストロサイトを生体画像化する際の分子標的となるMAO-BとI2BSについて概説し,またこれらの標的に結合するPETプローブを用いた臨床研究について紹介する.

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