2023 年 158 巻 1 号 p. 30-33
リピート病は遺伝子内のリピート配列の異常伸長変異を原因とする疾患である.異常リピートから産生されるRNAは高次構造を形成することで細胞毒性を誘導する.特に,グアニンリッチ・リピート伸長由来RNAは,非ワトソン-クリック型塩基対によりグアニン四重鎖(G-quadruplex:G4)構造を形成し,神経変性を誘導することが示唆されている.私達は,脆弱X随伴振戦/失調症候群(Fragile X-associated tremor/ataxia syndrome:FXTAS)において,CGGリピート由来G4構造RNAがRAN(repeat-associated non-AUG)翻訳により産生される疾患原因タンパク質FMRpolyG凝集を惹起することを発見した.本稿では,FXTASを含むグアニンリッチ・リピート病の神経変性機構におけるG4構造の機能を紹介すると共に,その病態発症メカニズムについて述べる.