日本薬理学雑誌
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特集:情動ストレス応答から探る新規治療標的
思春期の社会経験剥奪による眼窩前頭皮質-扁桃体経路の小領域特異的なシナプス機能変化
國石 洋山田 光彦
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2023 年 158 巻 1 号 p. 47-50

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抄録

幼少期(生後初期から思春期にかけての時期)は神経回路の発達や刈り込みなどによる整理が盛んな時期であり,外界からの刺激の有無に非常に感受性が高い.そのため,近年社会的問題となっている児童虐待やネグレクトなどによる幼少期の過剰なストレスや社会経験の剥奪は,情動や社会性,認知機能を担う神経回路の発達に悪影響を及ぼし,種々の精神疾患の発症リスクにつながる可能性が推測される.実際に,児童虐待やネグレクトを受けた経験と,様々な精神疾患の発症リスクとの相関が報告されている.しかし,幼少期の不適切な環境が情動や認知機能に悪影響を及ぼす神経回路メカニズムについては不明な点が多く,幼少期の不適切な環境が原因となる精神疾患の治療や予防法の確立のために,そのさらなる理解が重要である.本稿では,幼少期の環境と脳高次機能の発達について明らかにしてきたこれまでの知見について触れつつ,思春期マウスに対する社会隔離飼育が,社会性や情動に重要な“眼窩前頭皮質-扁桃体回路”のシナプス伝達に悪影響を与えることで,社会性やストレス対処の異常を引き起こすことを明らかにした,我々の研究について紹介する.

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