日本薬理学雑誌
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特集:薬理学・臨床薬理学教育におけるアクティブラーニングの新展開
EBMを学ぶためのPドラッグ教育
笹栗 俊之
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2023 年 158 巻 2 号 p. 112-118

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抄録

医療に直結する薬理学を医学生に学ばせるため,様々な新しい方法が試みられている.その中で,証拠に基づく医療(EBM)を学ばせるためには,「パーソナルドラッグ(Pドラッグ)の選択」という方法が適しているのではないかと考えてきた.医師が自分の診療にとって欠かせない医薬品を,科学的なエビデンスに基づいて厳選し,それらの使い方に精通し,原則としてそれらの薬だけで日常診療を行うとすれば,EBMが実践できるとともに,医療過誤や副作用被害の抑制にもつながると考えられる.このような医師個人の必須薬をPドラッグと呼ぶ.薬物治療のEBMを医学生に学ばせるため,2003年以来,私は「Pドラッグの選択」を医学部高学年の臨床実習に取り入れてきた.どのような方法で学ばせるのが最もよいか試行錯誤を重ねてきたが,ようやく,どこの大学でも容易に取り入れられる教育モデルを作ることができたのではないかと思う.ただ,このような教育改革が単に一大学の個人的な活動に終わってしまうとあまり意味がないので,薬理学教育担当者が意識を共有しようという今回のシンポジウムで発言できたのはたいへん有り難かった.シンポジウムでは,PドラッグとEBMの関係,Pドラッグ教育モデルとその使用経験などについて話したが,この特集においては,私がこのような教育方法に興味を抱いた契機についても述べ,Pドラッグ教育の普及に向けた提言を行いたい.なお,その中では私自身の葛藤なども隠さず述べているが,薬理学教育への問題意識からその解決策としてのPドラッグに至った経緯をあえて詳述することでメッセージを伝わりやすくしたいと思ったためで,「総説」としては多少違和感を覚えられるかもしれないが何とぞお許しいただきたい.

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