日本薬理学雑誌
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特集:薬理学・臨床薬理学教育におけるアクティブラーニングの新展開
実践的薬物治療教育「薬理学ロールプレイ」の医学・歯学・薬学・看護学教育における展開と工夫
柳田 俊彦
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2023 年 158 巻 2 号 p. 119-127

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抄録

薬理学教育のアクティブラーニングとして,学生同士が医療者と患者に扮して病気や薬物治療の説明を行う“実践的薬物治療教育”「薬理学ロールプレイ」がある.薬理学ロールプレイは,事前に提示された症例(Case)に基づいて学習を行い,コミュニケーション(Communication)を通じて能動的に学修することから,Case & Communication based approach(C&Cアプローチ)による薬理学アクティブラーニングと名付けている.2010年度に宮崎大学で開始され,2022年度までの13年間に医学・薬学・歯学・看護学の4学部28校(医学部23大学,薬学部1大学,歯学部2大学,看護学科2大学)において,共通プログラムとしながらも,大学や学部の特性に合わせてさまざまな工夫を凝らしながら多様性を持って実施されている.薬理学ロールプレイは,実施した大学・学部・学年にかかわらず,①薬物治療の理解,②患者の気持ちの理解,③医療者としてのモチベーションの向上,④学習姿勢の変化に有効であった.さまざまな取り組みとしては,Personal Drugとの組み合わせや,医学生と看護学生が合同でロールプレイを実施することによる多職種連携教育への展開,漢方薬を含む症例の活用による東洋医学教育への展開のほか,コロナ禍に対応したオンライン講義,さらにはオンライン実施の特性を生かした2大学合同実施などがあり,いずれも高い有効性を認めている.多施設共通プログラムのメリットとしては,多くの情報が一気に得られ,うまくいった工夫を速やかに反映しやすいことが挙げられる.状況に応じて実施方法(対面/遠隔)を柔軟に変更できる柔軟性やレジリエンスの高さも大きな強みである.

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