日本薬理学雑誌
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特集:先端的機能イメージングによる脳疾患の回路病態の解明
自閉症モデルマウスにおける行動中の皮質機能ネットワーク解析
中井 信裕内匠 透
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2023 年 158 巻 2 号 p. 150-153

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抄録

自閉症(自閉スペクトラム症)は,社会性コミュニケーションの欠如や常同・反復行動,感覚刺激に対する過敏・鈍感性の知覚異常を示す神経発達障害のひとつである.自閉症の原因はいまだ不明であり,どのような脳機能異常が自閉症行動につながるのか明らかとなっていない.機能的磁気共鳴画像研究では,幼児期における脳機能ネットワークの過密状態や成人期における低密度状態が自閉症患者で報告されている.しかしながら,脳機能ネットワークの変化が自閉症行動に対してどのような影響を与えるのかは技術的に調べることが困難であった.本研究では,マウスの行動計測が可能なバーチャルリアリティシステムと広範囲の神経活動を計測することができる経頭蓋カルシウムイメージング法を組み合わせることで,行動中マウスの皮質活動を測定し,皮質領野間の活動相関に基づくグラフ理論的アプローチによって大脳皮質の機能ネットワーク動態を解析した.そして,自閉症の代表的な染色体異常である15番染色体重複を模した自閉症モデルマウスを用いて,行動状態における大脳皮質機能ネットワーク異常を明らかにした.本研究によって,脳機能ネットワークに基づく自閉症の神経病態解明への道が拓かれることが期待される.

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