脳および脊髄を含む中枢神経系組織は,神経細胞やグリア細胞,血管系細胞や免疫細胞など多種多様な細胞によって構成され,それらの複雑かつダイナミックな相互作用によって高度な機能が維持されている.その中でも,中枢機能を正確に維持するために欠かすことのできない細胞が,著者らの研究対象である脳内マクロファージである.脳内マクロファージと聞いてまず思い浮かぶのが,脳内主要免疫細胞として知られるミクログリアではないかと思う.長年の研究から,ミクログリアの細胞特性や機能,他の免疫細胞との関係,中枢神経系疾患への関与などが明らかになってきている.一方,ミクログリアの傍らであまり目を向けられてこなかった第2の脳内マクロファージが存在する.それが,髄膜や血管周囲空間などの境界領域に存在する脳境界マクロファージ(CNS associated macrophages:CAMs)である.その存在は長年認知されてきたものの,CAMsはミクログリアと遺伝子プロファイルが非常に似ており,これまで両細胞種を正確に分けて解析した報告は少なかった.近年,CAMsに着目した研究も増加しつつあり,その理解もようやく進み始めた.本稿では,ミクログリアおよびCAMsに関して,その発生・維持メカニズムや細胞特性,またそれらを解析するための研究ツールについて,最新の知見を交えて概説する.