日本薬理学雑誌
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特集 免疫応答の制御におけるマスト細胞,好塩基球の新たな役割
マスト細胞・好塩基球研究の新展開
田中 智之
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2024 年 159 巻 1 号 p. 44-47

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抄録

マスト細胞と好塩基球は,IgEに対する高親和性受容体であるFcεRIを発現することや,顆粒にヒスタミンを貯留し,刺激に応じて放出すること,あるいは炎症性,抗炎症性両方のサイトカインを産生する能力をもつといった,共通点を数多く有する.これらのよく似た白血球は,しかしながら,それぞれ異なる分化過程を有することが分かっている.これまでの研究からは,両細胞種がアナフィラキシーのようなⅠ型アレルギーや蕁麻疹において重要な役割を果たすことが示唆されている.実際に,ヒスタミン,血小板活性化因子,プロスタノイド,ロイコトリエンといった,マスト細胞,あるいは好塩基球から放出される炎症性メディエーターは,Ⅰ型アレルギーや炎症性疾患の治療薬の標的として注目を集めてきた.一方,近年のこの領域の研究は,細菌感染,エネルギー代謝,皮膚/消化管炎症におけるマスト細胞あるいは好塩基球の生理的な機能を明らかにしている.本総説では,感染症や慢性炎症性疾患の新たな治療法の手がかりとなることが期待される,近年の知見について概説する.

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