アポハイド®ローション20%はオキシブチニン塩酸塩を有効成分とする原発性手掌多汗症の局所治療薬である.オキシブチニンは長年にわたり過活動膀胱の治療薬として医療現場で使用されており,その薬理学的特性及び過活動膀胱に対する有効性及び安全性は広く知られている.これまで原発性手掌多汗症の治療において第一選択は,塩化アルミニウム外用療法と水道水イオントフォレーシス療法のいずれかであったが,本剤の登場によりこれらに外用抗コリン薬が新たに追加された.原発性手掌多汗症の原因であるエクリン汗腺からの発汗は,アセチルコリンが汗腺上に存在するムスカリン性アセチルコリン受容体のサブタイプM3受容体に結合することで惹起される.一方,オキシブチニンはムスカリンM3受容体に結合することで,抗コリン作用を示すことが確認されている.また,オキシブチニンによる臨床効果にはその活性代謝物であるN-デスエチルオキシブチニンも関与すると考えられている.久光製薬株式会社はこれらによる発汗抑制作用を期待して本剤の開発に着手し,国内で原発性手掌多汗症患者を対象とした臨床試験を実施した結果,本剤はプラセボと比較して発汗量のレスポンダー(発汗量がベースラインから50%以上改善した患者)の割合が有意に高く,本剤のプラセボに対する優越性が検証された(本剤群:52.8%,プラセボ群:24.3%;群間差:28.5%;P<0.001,Fisherの直接確率法).安全性に関しては,抗コリン作用による有害事象や適用部位の有害事象(皮膚症状)が報告されたものの,大部分が軽度であった.52週間の長期投与時において効果の減弱は認められず,有害事象により治療を中止した患者は少数(2/125例)であった.以上のことから,アポハイド®ローション20%は原発性手掌多汗症の患者に新たな治療の選択肢を提供できると考えられる.