日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
特集 薬理学-免疫学-構造生物化学から視る新たながん治療戦略
グルタミン酸による骨髄由来免疫抑制細胞の制御
立花 雅史
著者情報
ジャーナル 認証あり HTML

2025 年 160 巻 3 号 p. 158-162

詳細
抄録

骨髄由来免疫抑制細胞(myeloid-derived suppressor cell:MDSC)は担がん生体において抗がん免疫応答を抑制することで,がんの進展を促進している.近年開発された免疫チェックポイント阻害薬は様々ながん治療において著効を示すが,20~30%程の患者にしか有効性を示さず,効果予測のためのバイオマーカーや併用療法の開発が待望されている.免疫チェックポイント阻害薬の治療抵抗性の原因としてMDSCが挙げられていることから,MDSCを標的とする治療法は免疫チェックポイント阻害薬の併用療法として有望である可能性を秘めている.顆粒球コロニー刺激因子(granulocyte colony-stimulating factor:G-CSF)は発熱性好中球減少症の治療や予防に用いられているが,MDSCの増殖促進を介した腫瘍促進的な作用も報告されている.著者らは,G-CSFがγ-glutamyltransferase 1(GGT1)の発現を亢進させることでMDSCの免疫抑制能を増強させることを明らかにした.GGT1は細胞外グルタチオンを分解する膜発現型酵素であり,がん早期発見のマーカーとしても期待されており,腫瘍増悪化にも関与することが報告されている.G-CSF刺激によるGGT1発現上昇に起因するグルタチオン分解の促進により生成物であるグルタミン酸量が増加し,グルタミン酸が代謝型グルタミン酸受容体を介してシグナルを伝達することでMDSCの免疫抑制能が増強される可能性を見出した.さらに,発熱性好中球減少症モデルマウスにおいてG-CSFががんの進展を促進することを見出し,モデルマウスにおけるG-CSFの腫瘍促進的な作用を明らかにした.加えて,GGT阻害によってその効果が打ち消されることを明らかにした.以上のことから,GGT阻害によってG-CSFによる薬理効果を阻害することなく,MDSCを介した副作用のみを阻害できる可能性を示したと考えられた.本知見は,より安全かつ効果的ながん治療の開発に資するものと考えられる.

著者関連情報
© © 2025 公益社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top