2026 年 161 巻 1 号 p. 21-26
骨格筋を構成する筋線維は,骨格筋の有する運動器官としての機能に対し必要不可欠な役割を担っている.筋収縮・弛緩の過程で筋線維は絶えず物理的な刺激を感知し,筋線維のもつ強靭な構造により損傷を防ぐとともに,物理的な刺激に対して適応し骨格筋としての「しなやかさ」を維持している.細胞の生死を規定する因子のひとつとして,細胞内外のイオン濃度制御が挙げられる.骨格筋において,細胞内Ca2+貯蔵庫である筋小胞体からのCa2+放出が筋収縮をもたらすことは周知の事実であるが,一方で細胞外からのCa2+流入は,筋線維における恒常性維持に重要な役割をはたすことが明らかになりつつある.また,Ca2+はセカンドメッセンジャーとして機能するが,生体に存在する他のイオンについても,それらの役割は依然不明である.本稿では,骨格筋が運動器官としての物理的なストレスに適応する機構として,Ca2+をはじめとするイオン流入がもたらす意義について,細胞膜の修復過程,筋再生過程を中心に最近の知見を踏まえて概説したい.