日本薬理学雑誌
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特集 骨格筋恒常性維持における受容体・チャネル研究の最前線
筋チャネル病の病態解析
久保田 智哉榊原 由奈
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2026 年 161 巻 1 号 p. 27-32

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抄録

筋チャネル病は,筋細胞の電気的活動性を制御に必要なイオンチャネルをコードする遺伝子に変化を生じることで発症する,希少遺伝性疾患である.原因となる遺伝子には,骨格筋型クロライドチャネル(ClC-1)をコードするCLCN1遺伝子,内向き整流性カリウムチャネル(Kir2.1)をコードするKCNJ2遺伝子,骨格筋型カルシウムチャネル(Cav1.1)をコードするCACNA1S遺伝子などが挙げられる.中でも,骨格筋型電位依存性ナトリウムチャネルであるNav1.4をコードするSCN4A遺伝子では,100を超えるヘテロ接合性バリアントが同定されており,それらは多彩な臨床症状を呈する.たとえば,ナトリウムチャネルミオトニー,先天性パラミオトニーといった,非ジストロフィー性ミオトニー症候群や,高カリウム性周期性四肢麻痺,低カリウム性周期性四肢麻痺といった遺伝性周期性四肢麻痺がそれらにあたる.近年になり,SCN4A遺伝子の複合ヘテロ接合性バリアントや,ホモ接合性バリアントが,先天性ミオパチーや先天性筋無力症に関連することが報告されてきており,筋チャネル病の多彩さは広がりを見せている.変異Nav1.4チャネルの電気生理学的機能解析により,非ジストロフィー性ミオトニー症候群における臨床症状とチャネル機能異常との関連が明らかになってきている.その一方で,低カリウム性周期性四肢麻痺は,近年になりゲーティングポア電流という根源的異常と考えられる漏洩電流が発見されたものの,その治療薬開発の進展はほとんどない.近年,我々のグループは,HEK293T細胞を基とした低カリウム性周期性四肢麻痺のモデル細胞を作成し,治療薬探索のためのスクリーニング系の開発を進めている.今後,チャネル病研究が,病態解析から治療薬開発へ発展することが期待される.

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