2026 年 161 巻 2 号 p. 115-122
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は,全身の筋萎縮・筋力低下,構音障害,嚥下障害,呼吸筋麻痺等を呈する進行性の難治性神経変性疾患である.呼吸筋の麻痺による呼吸不全が主たる死亡原因で,人工呼吸器を装着しなければ発症後約2~5年以内に死に至る.メコバラミンは活性型ビタミンB12の一種であり,ホモシステインからメチオニンを合成するメチオニン合成酵素の補酵素として働くことにより,ALSにおけるホモシステイン誘発細胞死を抑制すると考えられる.1990年代より,厚生科学研究費補助金特定疾患対策研究事業の神経変性疾患に関する研究班において,高用量のメコバラミンがALS患者に対して臨床効果を示す可能性が示唆されたことより,臨床開発に着手した.第Ⅱ/Ⅲ相プラセボ対照二重盲検比較試験が実施されたが,主要評価項目を達成できなかった.この第Ⅱ/Ⅲ相の知見をもとに,ALS発症から治験開始日まで1年以内の患者集団を対象とした第Ⅲ相プラセボ対照二重盲検比較試験が徳島大学病院を中心に医師主導治験として実施された.この臨床試験では,主要評価項目である改訂ALS Functional Rating Scale合計点数低下の抑制から高用量メコバラミンの有効性が示され,安全性についても確認された.本剤は,この試験成績に基づき,2024年9月に「ALSにおける機能障害の進行抑制」の効能又は効果で製造販売承認を取得した.ALS治療の新たな選択肢として期待される.