日本薬理学雑誌
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特集 中枢神経疾患に対する革新的アプローチ:診断から治療まで
神経生理学的指標による精神疾患モデル解析
三輪 秀樹
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2026 年 161 巻 2 号 p. 70-74

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抄録

統合失調症,自閉症スペクトラム障害(ASD),うつ病などの精神疾患の発症原因は解明されておらず,いまだ明確な診断基準および根治療法となる有効な治療薬はない.これは,精神疾患患者群が実際にはヘテロな集団であり,臨床試験においては単一の集団として扱うことで,精神疾患治療薬開発の成功率が低くなってしまっていることが原因の1つと考えられる.このような背景のもと,精神疾患の診断および治療薬開発において,DSM-5やICD-11のような症候群による分類に基づく診断ではなく,Research Domain Criteria(RDoC)のような客観的なバイオマーカーによる層別化の必要性が提唱されている.さらに,精神疾患の病態解明および治療薬・治療法の開発には,非臨床研究と臨床研究の相互のトランスレーションのためのヒトと実験動物をつなぐ共通の客観的指標が希求されている.

統合失調症患者において高い再現性で睡眠障害が併存しているが,ノンレム睡眠中に観察されるスピンドル波発生の異常は,新たなバイオマーカーとして着目されている.さらに,スピンドル波の異常は,統合失調症だけでなく,アルツハイマー病,ASD,パーキンソン病患者の一部でも観察されることが報告されている.このことは,異なる精神・神経疾患間に共通の病態基盤が存在する可能性を示唆している.本稿では,精神疾患の病態生理学的理解を深めるために,著者が着目しているヒトと実験動物とで共通の指標で客観的に評価できる神経生理学的指標として,ノンレム睡眠スピンドル波およびガンマオシレーションなどの脳波について紹介する.

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