2026 年 161 巻 3 号 p. 150-157
田辺ファーマでは,疾患特性に応じた最適なモダリティの選択・設計を通じて革新的医薬品の創製を目指しており,神経,免疫,がんを主要な対象疾患領域とし,病態に即したアプローチを通じて治療選択肢の拡充を図っている.本稿では,免疫およびがん領域における取り組みを概説する.免疫領域では,患者の免疫学的表現型に着目した「イムノフェノタイプ創薬」を推進し,疾患横断的な病態理解に基づき,低分子,抗体,機能性タンパク質など多様なモダリティを選定している.「プラズマ細胞型イムノフェノタイプ」には免疫プロテアソームLMP7/LMP2(immunoproteasome subunit low molecular mass peptide:LMP)阻害薬,「活性化T細胞型イムノフェノタイプ」にはIL-2変異体/抗TNFR2(tumor necrosis factor receptor 2)アゴニスト抗体融合タンパク質の創製に取り組んでいる.がん領域において当社は,「標的タンパク質分解誘導薬(Targeted Protein Degradation:TPD)」という新規モダリティを基盤とした創薬展開を推進している.TPDは標的タンパク質の選択的分解により治療選択肢の拡大に寄与する革新的アプローチである.当社が世界に先駆けて見出したBRD4(bromodomain containing 4)阻害薬Y-803の知見を活用し創製したMT-4561は,BRD4に対して高い分解活性を示すとともに,複数の腫瘍モデルにおいて顕著な抗腫瘍効果を確認している.現在,MT-4561は第Ⅰ相臨床試験が進行中であり,TPDを用いたがん治療の新たな可能性を切り拓くものと期待される.これらの取り組みは,疾患ごとの病態に応じて最適なモダリティを選択・設計するという創薬アプローチを通じて,難治性疾患に対する新たな治療選択肢の創出を目指すものであり,科学的知見と技術革新の融合による創薬の進化を体現している.