日本薬理学雑誌
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特集 ミトコンドリアをみる・よむ・つくる~新たな医療基盤技術の開発を目指して~
人工ミトコンドリアゲノムの創出は可能か?
和田 健一
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2026 年 161 巻 4 号 p. 216-221

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抄録

ミトコンドリアゲノム(mtDNA)は,およそ16.5 kbpの環状DNAで,一細胞に~数千コピー含まれる.mtDNAは,核ゲノムに比べると極めて小さなゲノムであるが,酸化的リン酸化によるATP合成を担う生体の生存に必須なゲノムである.広域な疾病に対するmtDNA変異の関与が示唆されており,mtDNAを対象とした遺伝子治療はこれらの疾病の有望な治療手段として期待されるが,限定的なmtDNA操作しか行うことができない.本稿では,自由自在なmtDNA操作を可能にするmtDNAライティングの実現を目指す筆者の取り組みを紹介する.外来mtDNAを優先的に受容して内在mtDNAと全置換が生ずる特殊なホスト細胞(e-mt細胞)の創出が,mtDNAライティング実現の鍵となると発想した.ここで,本来のジェノタイプから逸脱したmtDNAをホモプラズミックに維持する細胞が,e-mt細胞として機能すると考えた.そこで,ホモプラズミックなmtDNA改変を目指した,マイクロ流体デバイスを用いたミトコンドリア移植技術を開発した.開発したマイクロ流体デバイスは,微小な孔(マイクロスリット/マイクロトンネル)介して細胞を融合することにより,細胞間の直接的,且つ,非侵襲的なミトコンドリア移植を実現した.さらに,単一ミトコンドリア移植と,ρ0細胞を対象としたミトコンドリア移植によるサイブリッド作製にも成功した.これらの結果から,開発したマイクロ流体デバイスは,mtDNAのクローニングを通じてホモプラズミックなmtDNA改変を実現し,e-mt細胞の創出に寄与することが期待される.

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