2026 年 161 巻 4 号 p. 253-256
細胞膜の主要な構成成分はリン脂質であるが,細胞膜には糖鎖に修飾されたスフィンゴ糖脂質やコレステロールが豊富に存在する領域が認められる.このような領域は膜マイクロドメインとよばれ,受容体やシグナル伝達を調節する細胞内外のタンパク質が密に局在する.膜マイクロドメインは海に浮かぶ “いかだ” のように細胞膜上を自由に動き回り,リガンド存在下では細胞内のシグナル伝達分子と会合することで,細胞の機能制御に深く関与する.細胞表面に存在する受容体を含む多くのタンパク質や細胞外に分泌されるタンパク質は糖鎖による修飾をうけ,特定の糖鎖構造を認識するレクチンと相互作用する.この糖鎖-レクチンの相互作用は,細胞の機能制御に重要な役割を果たす.受容体やホルモン上の糖鎖と膜マイクロドメインに豊富に存在する糖脂質上の糖鎖は,生体内に存在する内在性レクチンにより認識され,架橋されることで,受容体などの細胞表面分子の挙動が調節されている.我々は,ガラクトースを認識するガレクチンの生体内における機能に注目してこれまで解析を行ってきた.ガレクチンは哺乳類では15種類のサブタイプが報告されており,消化管,尿生殖器,免疫系器官など,組織・細胞特異的に生体内に広く分布する.我々は,妊娠の成立や維持に必須なプロゲステロンを産生する黄体の機能制御メカニズムにおけるガレクチンの機能を解析する過程で,細胞膜脂質が黄体機能制御に中心的な役割を果たすことを見出した.本稿では,細胞膜脂質,特に脂質由来メディエーターであるプロスタグランジンEとスフィンゴ糖脂質の質的・量的変化,および,ガラクトース認識ガレクチンによるヒト黄体の機能制御メカニズムについて紹介する.