日本薬理学雑誌
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視細胞外節の特徴的な膜構造と膜タンパク質の繊毛輸送におけるエンドソーム経路の役割
大津 航
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ジャーナル 認証あり 早期公開

論文ID: 23077

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抄録

ヒトをはじめとする哺乳動物は,網膜に達した可視光線を視細胞が受容し,そのシグナルが脳に伝達されることで,明暗や色,形などの情報を視覚として認知している.光子を吸収し,そのエネルギーを化学シグナルへ変換する初期反応を担っているのが外節と呼ばれる視細胞独自の膜小器官である.外節の内部にはディスク膜と呼ばれる扁平な膜構造が多数存在しており,ロドプシンを豊富に含んでいる.この特徴的な構造は一次繊毛に由来し,網膜の成熟とともに発達して形成される.そのディスク膜の辺縁にはペリフェリン2(Peripherin-2,PRPH2もしくはRDS)と呼ばれる視細胞特異的テトラスパニンが分布し,ホモもしくはヘテロ多量体を形成し膜を屈曲させることで,膜構造を変形・維持していると考えられている.PRPH2の遺伝子変異は多様な遺伝性網膜変性疾患を引き起こすことが知られているが,細胞質内に位置するカルボキシル末端(C末端)領域の変異は特に黄斑関連疾患との関わりが報告されている.ペリフェリン2のC末端領域は外節の局在に必須であることが知られていたが,筆者らの研究によりその輸送機構に後期エンドソーム経路が関わっていることが明らかになった.同じくディスク膜に局在する膜タンパク質であるロドプシンはそのC末端に繊毛輸送配列VxPxを含み,ロドプシン輸送複合体との相互作用を介してゴルジ装置から外節に輸送される.近年,薬剤による遺伝子発現誘導系を用いた研究により,げっ歯類においてペリフェリン2とロドプシンは各々独立した経路によって外節へと輸送され,それらは外部の光環境によって制御されることが明らかになった.本稿では,視細胞における特徴的な繊毛構造の要であるペリフェリン2の役割について概説するとともに,視細胞の繊毛輸送の最近の知見について紹介する.

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