日本薬理学雑誌
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脳卒中易発症ラット(SHRSP)の脳血管障害発症過程解明へのMRI利用の試み
高橋 昌哉B. FRITZ-ZIEROTH山口 基徳小川 博田中 友世笹川 祐成筑後 孝章太田 善夫岡本 耕造
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1992 年 100 巻 1 号 p. 21-28

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抄録

脳卒中易発症性高血圧自然発症ラット(SHRSP)の卒中に伴う脳内変化をMagnetic Resonance Imaging(MRI)を用いて非侵襲的に観察し,病理学的検索結果と比較検討した.雄性SHRSP10例を4週令より低Mg2+/Ca2+含有船橋SP食,食塩水(1%)飲水条件で飼育したところ,12~13週令で全例顕著な体重減少と共に攻撃性,過敏性の亢進などの神経症状を発症した.神経症状発症1~2日目のMRIのT2強調画像(T2-WI)において,皮質,視床などの脳領域に高信号部位が10例中9例で検出された.これらの高信号部位の数,範囲は,病理検索上浮腫,グリオーシス,軟化,嚢胞,赤血球の漏出などの脳血管障害の観察された脳部位の数,範囲にほぼ一致していた.T1強調画像(T1-WI)では脳内に高信号部位は検出されなかったが,造影剤Magnevist®投与によりT1-WIにおいても,T2-WI上高信号を示す脳領域のうち約8割の領域で斑状の高信号部位が造影検出された.これらの8割の脳領域では上記の脳血管障害に加えて血管壊死や血栓も確認された.T2-WIの高信号脳領域中に点状の低信号部位が3箇所で観察されたが,この低信号部位はT1-WIおよびMagnevist®投与T1強調画像(Gd-T1-WI)においても検出され,血腫形成脳部位に一致していた.また,T2-WIにおいては,脳梁あるいは脳室が高信号を示す例も見られた.神経症状発症3~4日目のMRIでは,T2-WIでの上記の異常信号部位は変わらず検出されたが,Gd-T1-WIにおいては一部の脳部位が検出されなくなり,血液脳関門の修復が示唆された.以上,各種画像条件でのMRIにより,SHRSPの脳卒中発症時の脳血管障害の部位,病変の種類,程度,経時的変化を非侵襲的に検出識別することが可能であり,SHRSPへのMRI利用が脳卒中に伴う脳血管障害の発症過程の解明あるいは治療薬の薬効評価に有用であることが示唆された.

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