日本薬理学雑誌
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ラット摘出大動脈における各種血管収縮物質による収縮に対する塩酸Palonidipine(TC-81)の抑制作用
青木 久美子岸本 直砂川 清崇岡宮 芳明保科 憲二竹下 徹
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1993 年 101 巻 4 号 p. 281-288

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抄録

新規カルジウム拮抗薬,塩酸palonidipine(TC-81)のノルエピネフリン(NE),セロトニン(5-HT),プロスタグランジンF(PGF)及びトロンボキサンA2アナログ(U-46619)による血管収縮反応に対する作用をラット摘出大動脈を用いて検討し,高濃度K+による収縮反応に対する作用と比較した.TC-81 10-10~10-8Mの2時間前処置はNE,5-HT,PGF及びU-46619によって惹起される収縮を濃度依存的に抑制したが,10-8Mでも抑制率は50%以下であった.TC-81 10-8Mの2時間前処置はCa2+除去下での各種血管収縮物質による収縮反応に対してほとんど抑制作用を示さなかったが,それらの収縮物質の存在下で外因性にCa2+を添加することにより生じる収縮反応を抑制した.それらの抑制作用は高濃度K+存在下のCa収縮に対する抑制と比較していずれも弱かった.また,TC-81 10-7Mはラット大動脈の細胞内cyclic AMP(cAMP)濃度をほとんど変化させなかった.以上の結果から,TC-81のラット摘出血管におけるNE,5-HT,PGF及びU-46619による収縮に対する抑制作用は,各血管収縮物質による細胞内Ca2+貯蔵部位からのCa2+遊離を抑制したり,細胞内cAMP濃度の増加によるものではなく,主として細胞外からのCa2+流入の抑制により発現することが示唆された.しかも,この収縮抑制作用はK収縮に対する作用に比し弱かった.

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