2017 年 59 巻 1 号 p. 26-29
アブラナ属の生活環の短い品種(ファストプランツ)は,育種学や植物学の研究に用いられるだけでなく,教育用植物としての活用が報告されている.いくつかの突然変異系統やF1雑種やその交配によるF2雑種が市販され,遺伝実験に利用可能であるが,分子生物学的手法に関する報告は見当たらない.そこで,遺伝形質が遺伝子の本体(DNA)によって伝わることを可視化できる方法として,PCR法によるDNA多型を用いる遺伝実験を,ファストプランツを用いて行う方法について報告した.これまでの遺伝の学習では,優性と劣性の関係にある遺伝形質に関する遺伝が扱われてきた.そのため遺伝形質の遺伝から遺伝子がDNAによって伝わることを理解することは難しかったが本実験法はその困難性を打開する可能性があると考えられる.