日本薬理学雑誌
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新規ジヒドロピリジン誘導体, 塩酸palonidipine (TC-81) の心筋虚血モデル等に対する作用
岸本 直岡宮 芳明青木 久美子太田 幹雄保科 憲二竹下 徹
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1993 年 102 巻 2 号 p. 85-100

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抄録
新規ジヒドロピリジン誘導体, 塩酸palonidipine (以下palonidipineと略記) の抗狭心症作用について各種病態モデル系を用い, ニフェジピンと比較検討した. (1) バゾプレシンで惹起されるラット心電図ST下降に対し, palonidipineは0.5mg/kg, P.O.で有意な抑制作用を示した.この抑制作用は, ニフェジピンに比し約5倍高活性であり, 持続的であった. (2) イソプロテレノールで惹起されるラット心電図ST下降に対し, palonidipineは1mg/kg, i.d.で有意に抑制作用を示した.この抑制作用はニフエジピンよりも高活性であった. (3) palonidipineの3μg/kg, i. v.は慢性冠動脈狭窄犬の心筋虚血領域における組織血流量を増加させた. (4) 摘出イヌ冠状動脈における3, 4-DAP誘発周期性収縮に対し, palonidipineは10-10Mより濃度依存的な抑制作用を示した.この作用はニフェジピンに比し, 10~30倍高活性であった. (5) 麻酔開胸犬におけるエンドセリンの冠動脈内注入により, 冠動脈血流量及び心筋組織血流量の急速な減少ならびに心筋pHの緩徐な下降が認められた.この時, 心電図STが0.1mV以上に上昇したものは8/10例で, また全例に期外収縮の発生が認められ, 9/10例が死亡した.このようなエンドセリンによる心筋の虚血性変化に対して, palonidipine (3μg/kg, i.v.) の前投与は抑制を示し, その効果はニフェジピンよりも強かった.以上より, palonidipineが狭心症の治療に有用な薬剤となり得る
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