日本薬理学雑誌
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E3810のH+,K+-ATPase阻害作用に関する研究
藤崎 秀明桶谷 清柴田 寿村上 学藤本 昌俊若林 庸夫山津 功竹口 紀晃
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1993 年 102 巻 6 号 p. 389-397

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抄録
ブタ言粘膜より調製したH+,K+-ATPase及びウサギ胃腺標本での胃酸分泌に対する(±)-sodium 2-[{4-(3-methoxypropoxy)-3-methylpyridin-2-yl}methylsulfinyl]-1H-benzimidazole(E3810)の作用について検討した.E3810はH+,K+-ATPase活性を濃度依存的に阻害し,そのIC50値は2.6×10-7Mであり,オメプラゾール(OPZ)に比べ約10倍活性が強かった.またE3810のH+,K+-ATPase阻害活性は,インキュベーションメジウムのpHに依存し,酸性条件下で強かった.バリノマイシン及びMg・ATP存在下でプレインキュベーションしたとき,E3810のH+,K+-ATPase阻害活性は,Mg・ATP非存在下でプレインキュベーションしたときのE3810のH+,K+-ATPase阻害活性より約1000倍強かった.E3810,OPZによって阻害されたH+,K+-ATPase活性はセファデックスG-50カラムでのゲルろ過による洗浄によって回復しなかったが,ジチオスレイトール(DTT)添加により回復した.ウサギ胃腺標本での低用量(3×10-7Mおよび5×10-7M)のE3810による胃酸分泌抑制作用は経時的に回復した.OPZにはこのような作用は認められなかった.以上のことより,E3810はOPZより強力なH+,K+-ATPase阻害剤であり,その作用はOPZと同様にプロトネーションで活性化を受けH+,K+-ATPaseのSH基を阻害することによって抑制するものと推察される.また,ウサギ胃腺標本でのE3810による酸分泌抑制作用の持続は短いものと推察された.
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