日本薬理学雑誌
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ラット実験的腎炎に対するサイクロスポリンAの効果(2) 加速型受動ハイマン腎炎の発症・進展に対する抑制効果
永松 正小島 範幸鈴木 良雄
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1994 年 103 巻 1 号 p. 19-26

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抄録
免疫複合体の糸球体係蹄壁への沈着を特徴とする慢性腎症の実験的モデルである,加速型受動ハイマン腎炎に対するサイクロスポリンA(CyA)の効果を検討した.腎炎はラットをウサギγ-グロブリンで感作すると同時に腎尿細管刷子縁膜抗原(Fx1A)に対する抗血清を静注することにより惹起した.抗Fx1A血清静注の開始日から2.5,10,20mg/kgのCyAを1日1回40日間経口投与した.尿中タンパク排泄量は,腎炎対照群で19日目から有意に増加し,39日目で372mg/dayであったのに対し,CyAの10mg/kg投与により,29日目から腎炎対照群の約20%にまで有意に抑制された.また,CyAの20mg/kg群では実験期間を通じて尿中タンパク量は正常範囲内であった.腎炎対照群で認められた血中コレステロールの増加を37日目においてCyAの20mg/kgは腎炎対照群の10%以下にまで抑制した.腎炎対照群において糸球体係蹄壁の肥厚や一部スパイク形成が認められたが,CyAはそれらを著明に抑制した.ウサギγ-グロブリンに対する抗体価においてCyAの10mg/kgは腎炎対照群で認められる上昇の約50%を,そして20mg/kgは90%以上を抑制した.以上,CyAは加速型受動ハイマン腎炎の発症を用量に依存して抑制した.この効果はCyAの強力な抗体産生抑制作用によるものと考える.
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