日本薬理学雑誌
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新規Ca2+チャネル遮断薬KB-2796のセロトニン受容体結合と抗セロトニン作用
藤島 祐子原 英彰嶋澤 雅光横田 耕一洲加本 孝幸
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1994 年 104 巻 1 号 p. 19-29

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抄録
新規なCa2+チャネル遮断薬KB-2796(1-[bis(4-fluorophenyl)methyl]-4-(2,3,4-trimethoxybenzyl)piperazine dihydrochloride)のセロトニン(5-HT)受容体および5-HTで誘発される各種反応に及ぼす影響を検討し,他のCa2+チャネル遮断薬の作用と比較した.ラット大脳皮質膜標品においてKB-2796は5-HT2受容体に対する[3H]スピペロン特異的結合を濃度依存的かつ競合的に阻害し,そのKi値は0.57μMであった.一方,KB-2796はその他の5-HT受容体サブタイプ(5-HT1,5-HT1A,5-HT1B,5-HT1Cおよび5-HT3)に対して,10または100μMの濃度においても明らかな親和性を示さなかった.KB-2796はウサギ多血小板血漿における5-HT誘発血小板形態変化および5-HT促進性のコラーゲン誘発血小板凝集を濃度依存的に抑制し,そのIC50値はそれぞれ13.4および96.4μMであった.さらに,KB-2796はウサギ洗浄血小板の5-HT誘発細胞内遊離Ca2+濃度上昇を濃度依存的に抑制し,そのIC50値は25.7μMであった.また,KB-2796は30mg/kg,p.o.でラット5-HT誘発足浮腫を有意に抑制した.5-HTによって誘発されるこれらの反応に対する諸種Ca2+チャネル遮断薬の抑制作用は[3H]スピペロン特異的結合の阻害作用の強さとほぼ相関し,KB-2796の作用はジルチアゼムおよびニモジピンよりも強くフルナリジンとほぼ同程度であったが,ベラパミルよりも弱かった.以上,KB-2796はCa2+チャネル遮断作用の他に5-HT2受容体遮断作用を有していることが示唆された.
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