日本薬理学雑誌
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104 巻, 1 号
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  • 富山 勝則, 越川 憲明, 小林 雅文
    1994 年 104 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 1994年
    公開日: 2007/02/06
    ジャーナル フリー
    In behavioral studies, seeking the regional site of action of centrally acting drugs, injections are normally made directly into a restricted area of the brain using a microsyringe inserted in a guide cannula that had been implanted previously. This paper describes conventional methods for injecting a drug into the rat brain. The common technique used in brain dialysis studies is to apply the drugs focally into the brain by infusing them through the dialysis probe. One of the main problems of this technique is the difficulty in estimating actual doses of the drugs administered. The present paper also describes a microdialysis probe in combination with a microinjection tube to examine changes in the release and metabolism of dopamine within the area where the drugs were injected under experimental conditions similar to those used in behavioral studies. Using this method, we demonstrated the characteristic difference between two benzamide D2-receptor antagonists YM-09151-2 and l-sulpiride on dopamine release in rat striatum.
  • 畑 衛
    1994 年 104 巻 1 号 p. 7-18
    発行日: 1994年
    公開日: 2007/02/06
    ジャーナル フリー
    海馬を中心とした大脳辺縁系に高い親和性をもつカイニン酸(KA)を妊娠ラットに少量単回投与し,出生児における乳児期の行動発達および体重変化への影響,カイニン酸への反応性を検討した.カイニン酸3mg/kgあるいは蒸溜水(DW)を妊娠11,12,13,14,17,18あるいは19日目に単回投与し,出生児(G11KA~G19KA,G11DW~G19DW)を実験に使用した.その結果胎生14日以降暴露のKA群では雌雄ともに有意な体重の増加を認めた.またオープンフィールドテストによる観察では,1)G13KA群~G18KA群での15日齢における最初の線を横切るまでの潜時の有意な短縮,2)G17KA群雌雄での区画線横切り頻度の有意な減少,3)G12KA群雌およびG19KA群雌雄以外のKA群での15日齢における後肢立ち上がりの早期発現が認められた.自発的首振り運動,身づくろい行動の出現頻度,開眼期,排尿頻度および尿量に差はなかった.G12KA群,G14KA群およびG17KA群については,5週齢にてカイニン酸9mg/kgの皮下投与を行ない,反応性の変化を観察した。後肢ひっかき運動,辺縁性痙攣頻度については差はなかったが60分間のwet-dog shakes数はG17KA群雄のみ有意な増加を示した.本実験成績からカイニン酸は妊娠中比較的少量の単回投与でもラット胎児に影響を及ぼし,出生後の機能異常として生理的日常行動に変化が現れることが明らかとなった.成長および行動変化は,海馬,大脳皮質,視床下部の形成期である胎生13~18日でのカイニン酸胎生期投与に対し危険度の高い時期であることが示唆された.
  • 藤島 祐子, 原 英彰, 嶋澤 雅光, 横田 耕一, 洲加本 孝幸
    1994 年 104 巻 1 号 p. 19-29
    発行日: 1994年
    公開日: 2007/02/06
    ジャーナル フリー
    新規なCa2+チャネル遮断薬KB-2796(1-[bis(4-fluorophenyl)methyl]-4-(2,3,4-trimethoxybenzyl)piperazine dihydrochloride)のセロトニン(5-HT)受容体および5-HTで誘発される各種反応に及ぼす影響を検討し,他のCa2+チャネル遮断薬の作用と比較した.ラット大脳皮質膜標品においてKB-2796は5-HT2受容体に対する[3H]スピペロン特異的結合を濃度依存的かつ競合的に阻害し,そのKi値は0.57μMであった.一方,KB-2796はその他の5-HT受容体サブタイプ(5-HT1,5-HT1A,5-HT1B,5-HT1Cおよび5-HT3)に対して,10または100μMの濃度においても明らかな親和性を示さなかった.KB-2796はウサギ多血小板血漿における5-HT誘発血小板形態変化および5-HT促進性のコラーゲン誘発血小板凝集を濃度依存的に抑制し,そのIC50値はそれぞれ13.4および96.4μMであった.さらに,KB-2796はウサギ洗浄血小板の5-HT誘発細胞内遊離Ca2+濃度上昇を濃度依存的に抑制し,そのIC50値は25.7μMであった.また,KB-2796は30mg/kg,p.o.でラット5-HT誘発足浮腫を有意に抑制した.5-HTによって誘発されるこれらの反応に対する諸種Ca2+チャネル遮断薬の抑制作用は[3H]スピペロン特異的結合の阻害作用の強さとほぼ相関し,KB-2796の作用はジルチアゼムおよびニモジピンよりも強くフルナリジンとほぼ同程度であったが,ベラパミルよりも弱かった.以上,KB-2796はCa2+チャネル遮断作用の他に5-HT2受容体遮断作用を有していることが示唆された.
  • 佐藤 正巳, 甲木 由紀夫, 兼広 秀生, 河野 浩之, 溝田 雅洋
    1994 年 104 巻 1 号 p. 31-38
    発行日: 1994年
    公開日: 2007/02/06
    ジャーナル フリー
    1%コレステロール食(HCD)飼育ウサギの動脈壁弾性および内皮依存性弛緩反応について検討し,さらに,これらに対するethyl all-cis-5,8,11,14,17-icosapentaenoate(EPA-E)の影響を調べた.12週間のHCD飼育により,血中総コレステロール値の上昇,大動脈粥状硬化病変の発現,動脈壁弾性の低下およびアセチルコリン(ACh)の内皮依存性弛緩反応の減弱が認められた.EPA-E300mg/kgの12週間経口投与により,HCD飼育ウサギの血中総コレステロール値および大動脈粥状硬化病変に影響は認められなかったが,普通食飼育ウサギとほぼ同レベルの動脈壁弾性が保持された.HCD飼育ウサギ大動脈におけるAChの内皮依存性弛緩反応およびcGMP産生量の低下に対し,EPA-Eは低下の程度を改善したが,有意な差を認めなかった.従って,本モデルにおいては,EPA-Eは動脈壁弾性の低下を改善したが,内皮依存性弛緩反応に著明な影響を及ぼさないと考えられた.さらに,動脈壁弾性と内皮依存性弛緩反応あるいは大動脈粥状硬化面積との間に有意な相関が認められなかったことから,本モデルでの動脈壁弾性の低下には,血管内皮機能のひとつである内皮依存性弛緩反応の関与は少ないと考えられた.
  • 森本 繁, 鬼頭 剛
    1994 年 104 巻 1 号 p. 39-49
    発行日: 1994年
    公開日: 2007/02/06
    ジャーナル フリー
    抗うつ薬の薬効評価モデルとして若齢ラットにおける回転棒法の可能性について,抗うつ薬の薬効評価モデルとして汎用されているラットの強制水泳法と比較検討し,同時に懸垂法における成績も検討した.回転棒法では,抗うつ薬のイミプラミン(30mg/kg, p.o.),デシプラミン(10mg/kg, p.o.),クロルギリン(10mg/kg, p.o.),ミアンセリン(30mg/kg, p.o.),トラゾドン(10mg/kg, p.o.),クロミプラミン(30mg/kg, p.o.)およびアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)のエナラプリル(30mg/kg, p.o.)は,それぞれ用量依存性に回転棒上の歩行時間を有意に延長したが,抗不安薬のジアゼパムは,歩行時間を有意に短縮した.また,中枢興奮薬のテオフィリン,カフェインおよびセロトニン遊離促進薬のフェンフルラミンは,歩行時間に影響を及ぼさなかった.強制水泳法では,抗うつ薬のクロルギリン(30mg/kg, p.o.),中枢興奮薬のカフェイン(10,30mg/kg,p.o.)およびACE阻害薬のエナラプリル(10,30mg/kg, p.o.)は,有意に不動時間を短縮し,抗うつ薬のイミプラミンおよびデシプラミンも,不動時間を有意に短縮した,トラゾドンおよびクロミプラミンは不動時間に影響を及ぼさなかった.一方,抗不安薬のジアゼパムは,不動時間を有意に延長した.懸垂法では,中枢興奮薬のテオフィリン(100mg/kg, p.o.),カフェイン(10,30mg/kg, p.o.)が,それぞれ用量依存性に懸垂時間の有意な延長を示した.上記の抗うつ薬,セロトニン遊離促進薬,抗不安薬およびACE阻害薬は,懸垂時間に対し影響を及ぼさなかった.回転棒法で得られた成績と強制水泳法で得られた成績には,相関関係(r=0.657, P<0.01)がみられた.以上の成績から,回転棒法は,抗うつ薬および抗うつ作用を有する薬物の薬効評価に応用できると考えられる.
  • ―ex vivoにおける各種組織ACEに対する作用―
    橋本 善勝, 久保 雅己, 菅谷 健, 美濃部 敏, 渡辺 泰三, 山村 道夫, 松岡 雄三
    1994 年 104 巻 1 号 p. 51-61
    発行日: 1994年
    公開日: 2007/02/06
    ジャーナル フリー
    新規ACE阻害薬imidaprilの成熟自然発症高血圧ラット(SHR)における降圧作用機序を血清,胸-腹部大動脈,肺,腎臓,心臓,脳のACE阻害との関連から検討した.まず,組織のACE活性について調べたところ,SHRでは正常血圧ラット(NTR)同様,肺および大動脈のACE活性は他組織のそれより高かった.また,SHRはNTRより大動脈,心臓,脳でACE活性が有意に高く,肺でやや高く,血清,腎臓で有意に低かった.SHRにおいてimidapril(2mg/kg/day)1カ月間連続経口投与の初回投与時,脳以外のACE活性は投与1~6時間後を最大として80%以上阻害され,血清,肺,では投与6時間後から48時間後にかけて最大阻害から40~50%阻害への回復がみられたが,大動脈においては最大阻害が,腎臓,心臓においては60%近い阻害が,投与6時間後から48時間後まで持続した.最終回投与後では脳のACEも阻害されていたが,強力な阻害の認められたのは血清,大動脈,肺で,投与48時間後まで阻害の認められたのは大動脈,肺,脳であった.一方,初回投与時の血圧は6時間後まで次第に下降し,投与24時間後に若干回復する推移を示した.両時点の降圧程度は1カ月間連続投与後においても初回投与時のそれと同程度であり,投与48時間後においても降圧傾向が認められた.血圧推移とよく相関するACE活性阻害推移を示す組織は初回投与時には血清,肺であり,連続投与終了時には肺,腎臓,心臓であった.NTRの脳以外のACE活性も正常血圧には影響しないimidapril(0.5mg/kg)の単回経口投与により,強力かつ持続的に阻害された.imidaprilとエナラプリルはほぼ同程度のACE活性阻害,阻害持続を示したが,大動脈,肺および血清での阻害強度はimidaprilのほうがやや強く,またSHRにおける降圧効果も強い傾向を,持続も長い傾向を示した.以上より,昇圧進展後のSHRにおけるimidaprilの降圧効果は血清ACE阻害のみでは説明できず,肺や血管のACE阻害の寄与が大きいものと推察された.これらは退薬後の降圧効果にも寄与しているものと考えられるが,降圧効果の減少している時点での大動脈における強く持続的なACE阻害効果との関係は不明である.
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