抄録
1%コレステロール食(HCD)飼育ウサギの動脈壁弾性および内皮依存性弛緩反応について検討し,さらに,これらに対するethyl all-cis-5,8,11,14,17-icosapentaenoate(EPA-E)の影響を調べた.12週間のHCD飼育により,血中総コレステロール値の上昇,大動脈粥状硬化病変の発現,動脈壁弾性の低下およびアセチルコリン(ACh)の内皮依存性弛緩反応の減弱が認められた.EPA-E300mg/kgの12週間経口投与により,HCD飼育ウサギの血中総コレステロール値および大動脈粥状硬化病変に影響は認められなかったが,普通食飼育ウサギとほぼ同レベルの動脈壁弾性が保持された.HCD飼育ウサギ大動脈におけるAChの内皮依存性弛緩反応およびcGMP産生量の低下に対し,EPA-Eは低下の程度を改善したが,有意な差を認めなかった.従って,本モデルにおいては,EPA-Eは動脈壁弾性の低下を改善したが,内皮依存性弛緩反応に著明な影響を及ぼさないと考えられた.さらに,動脈壁弾性と内皮依存性弛緩反応あるいは大動脈粥状硬化面積との間に有意な相関が認められなかったことから,本モデルでの動脈壁弾性の低下には,血管内皮機能のひとつである内皮依存性弛緩反応の関与は少ないと考えられた.