日本薬理学雑誌
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回転棒法と抗うつ作用:若齢ラットを用いて回転棒法で抗うつ作用を評価しうるか
森本 繁鬼頭 剛
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1994 年 104 巻 1 号 p. 39-49

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抄録
抗うつ薬の薬効評価モデルとして若齢ラットにおける回転棒法の可能性について,抗うつ薬の薬効評価モデルとして汎用されているラットの強制水泳法と比較検討し,同時に懸垂法における成績も検討した.回転棒法では,抗うつ薬のイミプラミン(30mg/kg, p.o.),デシプラミン(10mg/kg, p.o.),クロルギリン(10mg/kg, p.o.),ミアンセリン(30mg/kg, p.o.),トラゾドン(10mg/kg, p.o.),クロミプラミン(30mg/kg, p.o.)およびアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)のエナラプリル(30mg/kg, p.o.)は,それぞれ用量依存性に回転棒上の歩行時間を有意に延長したが,抗不安薬のジアゼパムは,歩行時間を有意に短縮した.また,中枢興奮薬のテオフィリン,カフェインおよびセロトニン遊離促進薬のフェンフルラミンは,歩行時間に影響を及ぼさなかった.強制水泳法では,抗うつ薬のクロルギリン(30mg/kg, p.o.),中枢興奮薬のカフェイン(10,30mg/kg,p.o.)およびACE阻害薬のエナラプリル(10,30mg/kg, p.o.)は,有意に不動時間を短縮し,抗うつ薬のイミプラミンおよびデシプラミンも,不動時間を有意に短縮した,トラゾドンおよびクロミプラミンは不動時間に影響を及ぼさなかった.一方,抗不安薬のジアゼパムは,不動時間を有意に延長した.懸垂法では,中枢興奮薬のテオフィリン(100mg/kg, p.o.),カフェイン(10,30mg/kg, p.o.)が,それぞれ用量依存性に懸垂時間の有意な延長を示した.上記の抗うつ薬,セロトニン遊離促進薬,抗不安薬およびACE阻害薬は,懸垂時間に対し影響を及ぼさなかった.回転棒法で得られた成績と強制水泳法で得られた成績には,相関関係(r=0.657, P<0.01)がみられた.以上の成績から,回転棒法は,抗うつ薬および抗うつ作用を有する薬物の薬効評価に応用できると考えられる.
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