日本薬理学雑誌
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新規経口吸着剤キトサン被覆酸化セルロースの薬理学的特性(第2報)アドリアマイシン惹起進行性慢性腎不全ラットに対する作用
永野 伸郎吉本 宏西鳥羽 剛佐藤 広三宮田 そのえ日下 多景 世兵山口 達明
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1995 年 106 巻 2 号 p. 123-133

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抄録

慢性腎不全状態下で生体内に蓄積した尿毒症物質を消化管内で吸着し,糞便中に排泄させる機序により腎不全の進行を抑制させる目的で開発した新規経口吸着剤であるキトサン被覆酸化セルロース(キトサンDAC)の慢性腎不全動物に対する作用を検討した,ラットにアドリアマイシンを反復静脈内投与することで進行性の慢性腎不全ラットを作製後,キトサンDACを5%の割合で正常粉末食と混合し,paired-feeding条件下で約4カ月間飼育した.途中,2~4週間間隔で採尿,採糞および採血を行なった.また,対照薬として,保存期慢性腎不全患者に対しての有用性が報告されている活性炭経ロ吸着剤(クレメジン)を同様に混餌投与した.その結果,正常食群およびクレメジン群では摂食処置63~65日後より死亡例が観察されたのに対し,キトサンDAC群では100日後で初めての死亡例が認められた.摂食処置後の平均生存日数は,正常食群(93.9±7.8日)に対しクレメジン群(92.7±6.4日)では差は認められなかったが,キトサンDAC群(117.3±5.0日)では著明な生存日数の延長が観察された.また,アドリアマイシン投与ラットは高窒素血症,高クレアチニン血症,高リン血症,高脂血症,タンパク尿および貧血に特徴付けられた慢性腎不全症状を呈したが,キトサンDAC混餌投与により,血中尿素窒素値の上昇の抑制,血清クレアチニン値の上昇の抑制,血清リン値の上昇の抑制,赤血球数の減少の抑制が観察された.更に,キトサンDAC混餌投与により糞量の増加,糞水分含量の増加,糞中窒素排泄量の増加,タンパク質の見掛けの消化吸収率の低下,糞中リン排泄量の増加および糞中ナトリウム排泄量の増加が観察され,これらの作用が腎不全の進展に対して抑制的に作用したものと推察された.以上の結果は,慢性腎不全の薬物治療における経口吸清剤療法の新たな可能性を示唆するものと考えられた.

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