日本薬理学雑誌
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実験的潰瘍性大腸炎モデル動物に対するウリナスタチンの作用
長尾 祐二宮田 治男水口 清伴 美奈子加藤 克明
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1997 年 109 巻 1 号 p. 41-52

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抄録

ラットにデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)の自由摂取あるいはトリニトロベンゼンスルフォン酸/エタノール(TNB/EtOH)の経肛門的投与により誘発させた潰瘍性大腸炎モデルに対するウリナスタチンの作用をプレドニゾロン(PSL)およびサラゾスルファピリジン(SASP)と比較検討した.5%DSS水溶液を8日間自由摂取させることにより大腸粘膜に散在性のびらんの形成,炎症細胞の浸潤が認められたが,ウリナスタチン 10000 単位/kg/day(i.v.)をDss摂取開始日より投与することによりそれらは有意に抑制された.一方,大腸粘膜のびらんの形成においてPSL 1 mg/kg/day(p.o.)投与で有意な抑制が見られ,SASP 100 mg/kg/day(p.o.)投与で抑制傾向が見られた.次に,3%DSS水溶液を10日間自由摂取させた後に1%DSSに切り替えると共に,ウリナスタチン 3000 単位/kg/day(i.v.)を14日間投与したところ,大腸粘膜のびらんの形成は有意に抑制された.また,TNB/EtOH誘発モデルにおいて大腸に浮腫,出血,潰瘍性病変を伴った炎症が認められたが,ウリナスタチン 10000 単位/kg/day(i.v.)およびPSL 1 mg/kg/day(p.o.)投与群でその程度は有意に抑制され,SASP 100 mg/kg/day投与(p.o.)では抑制傾向が見られた.一方,ウリナスタチンはin vitroでヒト好中球エラスターゼおよびカテプシンG活性を強力に阻害し,ラットマクロファージからのTNFαおよびIL-8の産生をいずれも10単位/mlより用量依存的に抑制し,ウサギ白血球からの活性酸素の産生を30単位/mlより用量依存的に抑制したことから,ウリナスタチンのDSSならびにTNB誘発実験的潰瘍性大腸炎モデルにおける有効性の機序はこのような白血球由来の炎症性メディエーターの抑制が関与しているものと思われた.

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