日本薬理学雑誌
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麻酔犬腎血流量および心機能に対するアムリノン,ミルリノンおよびオルプリノンの作用比較
藤島 和幸山本 彰彦蜂須 貢
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1998 年 112 巻 6 号 p. 371-380

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抄録

アムリノンに代表されるphosphodiesterase III阻害薬(PDE III阻害薬)は急性心不全治療薬として臨床応用されており,特にアムリノンによる利尿作用が注目されている.その作用機序は腎動脈血流量増加作用によると考えられているが,アムリノンによる腎動脈血流量に対する作用を検討した成績は少なく, 結果も一致していない.そこで本研究においては麻酔犬を用い,腎および大腿動脈血流量に対するアムリノンの作用を検討し,類薬であるミルリノンおよびオルプリノンの作用と比較した.同時にこれら3剤の血行動態に対する作用も比較検討した.アムリノン(100~3000 μg/kg,i.v.)は用量依存的に腎動脈血流量を有意に増加させた.また大腿動脈血流量に対しても有意な増加作用を示した.一方,ミルリノン(10~300 μg/kg,i.v.)やオルプリノン(3~100 μg/kg, i.v.)には腎動脈血流量増加作用は認められず,大腿動脈血流量のみ有意な増加作用が認められた.血行動態に対しては,3薬ともに心収縮力(LV maxdp/dt)を用量依存的に有意に増加させたが,オルプリノンではアムリノンに比べその用量反応曲線の勾配が有意に急峻であった.また, 比較3薬ともに有意な心係数増加および体血管抵抗低下作用を示したが,体血管抵抗低下作用はアムリノンが最も強かった.以上の結果より,アムリノンのみが有意な腎動脈血流量増加作用を示し, その他の血行動態に対する作用は3薬ともに本質的な違いは見いだされないが, オルプリノンによる心収縮力増加作用の用量反応曲線はその勾配が急峻であることが示された.また, アムリノンによる心係数増加作用は体血管抵抗低下作用に依存する割合が高いことが示唆された.すなわちアムリノンによる利尿作用には腎血流量増加作用が関与すると推察され,アムリノンはミルリノンやオルプリノンに比べ腎動脈血流が減少し,血管内volumeoverloadを伴った急性心不全に特に有用であると考えられた.

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