日本薬理学雑誌
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ラット低温焼灼胃潰瘍の再発再燃に対する新規抗潰瘍薬T-593の効果―内視鏡による経過観察と組織学的評価―
森 由紀夫土井 康子橋場 和彦庄司 美保子水尾 美登利丸淵 茂樹荒井 博敏
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1998 年 112 巻 6 号 p. 381-393

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抄録

ラット低温焼灼胃潰瘍の治癒および再発再燃に対する新規抗潰瘍薬T-593の作用を, 内視鏡を用いた経日的観察および組織学的評価により検討した.ラットに低温焼灼胃潰瘍を作製した後, 薬物を潰瘍作製7日目より119日目まで1日1回経口投与し, その後190日目まで休薬した.各個体の潰瘍を7日目から175日目まで経日的に内視鏡で観察し, 190日目に組織標本を作製した.対照群では作製7日目より潰瘍係数が低下した後, 76日目以降経日的に潰瘍係数は増加し, 175日目には120日目と比較して明らかな再発再燃が認められた.T-593, ファモチジンおよびラニチジンは, いずれも投与期間中の内視鏡観察では有意な治癒促進作用を示した.しかし, 投与終了(潰瘍作製120日目)以後ファモチジンおよびラニチジンでは潰瘍係数が漸次増加し, 175日目には明らかな再発再燃が認められた.それに対し, T-593では投与終了後の潰瘍係数および累積再発再燃率は増加するがその程度は軽度であり, 明らかな再発再燃は認められなかった.潰瘍作製190日目の実体顕微鏡による潰瘍係数および組織学的治癒指数での評価においても, T-593がファモチジンおよびラニチジンより高い治癒率を示していた.また, 再発再燃率の高い対照群では, 異所性再生腺管および炎症性細胞浸潤がともに高度に出現していたのに対し, 再発再燃率が低いT-593群では, それらの程度が対照群に比べ有意に低く, より成熟した潰瘍癌痕を形成していた.一方, 連続投与後の胃酸分泌のリバウンドは, いずれの薬物にも認められなかった.以上, T-593はラット低温焼灼胃潰瘍に対して, 再発再燃の少ない潰瘍治癒促進作用を有することが示された.

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