抄録
細胞外の微少なpH変化を検出できるマイクロフィジオメーターを用い,ヒトα1aアドレナリン受容体を発現させたCHO細胞において,ノルアドレナリン刺激による細胞からの酸排出反応を解析した。時間軸に沿って2つのピークが認められ,1つ目は刺激後10秒程度で極大に達する早い相で,2つ目は2分後にプラトーに達する遅い相であった。いずれの相もノルアドレナリンの濃度に依存して増大したが,pEC50値は,6.0及び6.6と早い相で低値を示した。どちらの相もアミロライドやその類似体でほとんど抑制され,Na/H交換体を介した反応であると考えられた。これらの酸排出反応におけるCaの関与を検討したところ,BAPTA/EGTA処置によって早い相はほぼ完全に抑制されたが,遅い相はあまり影響を受けなかった。早い相におけるCa依存性についてCaチャネル阻害薬を用いてさらに検討したところ,抑制効果はEGTA,Ni,LOE908で認められ,nifedipine,verapamil,SKF96365,conotoxinGIVAはほとんど効果がなかった。ノルアドレナリンの反復刺激で阻害薬の抑制効果は増強し,α1アドレナリン受容体刺激時における酸排出反応の早い相には,細胞内の貯留Caと受容体作動性Caチャネルが関与していることが示唆された。