抄録
Conivaptan hydrochrolide(YM087)の薬理作用をin vitroおよびin vivo実験にて検討した.受容体結合実験において,YM087はV1A受容体およびV2受容体にほぼ同等でバソプレシン(AVP)に匹敵する高い親和性を示し,種差は認められなかった.YM087はAVPのヒトV1A受容体を介する細胞内Ca2+上昇作用およびヒトV2受容体を介するcAMP産生増加作用をいずれも濃度依存的に抑制した.ラットおよびイヌへの静脈内投与実験において,YM087はAVPの昇圧反応を用量依存的に抑制し,用量依存的な水利尿作用を発現した.経口投与実験において,YM087は強力かつ持続的なV1A/V2受容体遮断作用を示した.心不全モデルにおいて,YM087は心血行動態の改善,水利尿作用および低ナトリウム血症の是正を伴う予後の改善作用を示した.以上の結果より,YM087は世界初の経口投与で有効なV1A/V2両受容体遮断薬であることが示され,心不全や低ナトリウム血症の治療薬としての有用性が示唆された.