抄録
ペクテノトキシン-2(PCTX-2)は、養殖ホタテ貝の毒化の原因物質として単離精製・構造決定された、多数のエーテル環とラクトン環を持つマクロライド化合物である。PCTX-2の生理活性作用については、種々の癌化細胞株に細胞毒性を示すことが報告されているが、その詳細は不明である。そこで、本研究は、PCTX-2の生物活性作用を明らかにすることを目的とした。PCTX-2は、ラット大動脈における72.7 mM KClおよび1 μMフェニレフリン収縮を濃度依存性に抑制した。さらに、血管平滑筋由来のAlO細胞を用いて、PCTX-2の細胞形態への影響を検討したところ、PCTX-2は細胞形態には大きな変化を与えなかったが、ローダミン・ファロイジン染色によりアクチンを主成分とするストレスファイバー形成を抑制することが示唆された。次に、PCTX-2が直接アクチン重合を阻害する可能性を検証するために、単離骨格筋アクチン標品を用いてアクチン重合への影響を検討した。PCTX-2は、ピレン蛍光ラベルしたG-アクチンの重合に伴う蛍光強度増強速度とその最大蛍光を濃度依存性に抑制した。また、PCTX-2は濃度依存性にF-アクチンの粘稠度を低下させた。両者の実験系より、PCTX-2とアクチンのストイキオメトリーについて検討したところ、PCTX-2は見かけ上1:4のモル比でG-アクチンと結合することが示唆された。以上の成績から、PCTX-2は強力なアクチン重合阻害作用を持っことが示唆された。