2020 年 2020 巻 30 号 p. 416-437
本稿は,旧英領カリブ海地域のトリニダード島を例に,ヨーロッパ系白人のアイデンティティとしての白人性構築過程の一端について,いつどのような環境でヨーロッパ系白人として認識し,それがどのように白人性の構築に関係しているのか,オーラル・ヒストリー理論をもとに考察した.2017年8月と2018年2月の現地聞き取り調査で入手した語りの分析から明らかになったのは,①他の社会構成員とは身体的特徴や社会階層が違うという認識,②植民地時代の奴隷貿易・奴隷制の当事者であるとする,他者から強要された「悪者」としての認識,③身体的特徴や「悪者」とされていることを理由とした嫌がらせやいじめ,これらの認識と経験がヨーロッパ系白人の白人としての認
識を強めているということである.