日本薬理学雑誌
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喘息治療薬の開発状況と展望について
小野寺 憲治十川 紀夫十川 千春古田 裕昭
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2000 年 116 巻 6 号 p. 385-395

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抄録

喘息患者は国内においておおよそ380万人程度と推定されており,年々増加傾向にある.1999年における販売実績の分類においてはアドレナリン作動神経β2刺激薬,キサンチン誘導体の販売がそれぞれ35.7%と40.0%を占めており,ついで吸入ステロイドの21.4%,吸入抗コリン薬で2.9%である.1998年に「喘息予防・管理ガイドライン」が成人と小児の患者に対する薬物療法の基準としてまとめて公表された.このガイドラインによればアドレナリン作動神経β2刺激薬と吸入ステロイドを主要薬剤としているため,市場および新薬の開発に変化が起き始めている.喘息治療薬は,治療目的に対応してI)喘息急性発作の薬物治療(relievers)とII)慢性喘息の管理・コントロール(controllers)の2種類に分類される.このような背景から,現在臨床治験中のものを分類し紹介するだけではなく,それぞれの第一選択薬であるアドレナリン作動神経β2刺激薬とステロイド剤の吸入薬に関しては,構造活性相関の面から開発の経緯について解説した.これら主要薬物に関する新薬の開発状況としては,いかに持続的で,副作用が少なく誰にでも容易に取り扱えるかというドラッグデリバリーの工夫,すなわち剤形(ドライパウダーなど)と吸入器の改良,補助器具の開発に焦点が絞られてきている.他方,慢性喘息の長期管理では,気道炎症における新しい化学伝達物質の同定とそれらに対する拮抗あるいは合成阻害作用を有する新薬(抗アレルギー薬)が各種合成され治験中である.その中で,タキキニン拮抗薬の喘息への適応やヒスタミンH3受容体刺激薬(α-メチルヒスタミンなど)の呼吸器領域での臨床応用が期待されている.特に最近,遺伝子組換えによるIgE抗体産生を除去するヒト型化モノクローナル抗体による治療が試みられて来ており,今後,第一線の医療での喘息治療における薬物療法が劇的に変化するものと思われる.最後に,喘息の治療薬の今後の展望について論じた.

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