日本薬理学雑誌
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116 巻 , 6 号
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  • 丸山 和佳子, 直井 信
    2000 年 116 巻 6 号 p. 333-342
    発行日: 2000年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
    孤発性パーキンソン病の原因は不明であるが,ヒト脳に内在するドパミン神経細胞に選択的な神経毒が関与している可能性が示唆されている.神経毒候補物質の中でも脳内でドパミンより2段階の酵素反応により生成されるN-methyl(R)salsolinol[NM(R)Sal]は in vivo においてラット脳黒質ドパミン神経細胞に選択的な毒性を示した.さらに,未治療パーキンソン病患者の脳脊髄液でNM(R)Sal濃度が増加していること,NM(R)Salはヒト脳黒質線条体に蓄積していることが示され,さらに脳内NM(R)Sal生成の律速段階は(R)サルソリノール中性N-メチル転移酵素[nNMT]であることが示唆された.リンパ球におけるnNMT活性を測定したところ,パーキンソン病患者では対照より有意に増加していた.nNMTの活性増加を引き起こす遺伝および環境要因がパーキンソン病の原因に関与している可能性がある.一方,パーキンソン病における神経細胞死はアポトーシスであるとの報告がなされているが,NM(R)Salはヒトドパミン神経芽細胞腫であるSH-SY5Y細胞にアポトーシスを惹起することが見い出された.アポトーシスの細胞内シグナルを検討したところ,ミトコンドリアの膜電位低下に引き続きカスパーゼ3の活性化と核の凝縮と分葉,DNAの断裂が認められた.さらに,NM(R)Salの光学異性体であるN-methyl(S)salsolinol[NM(S)Sal]はミトコンドリアの膜電位低下を惹起せず,アポトーシス誘導活性も殆ど認められなかった.ドパミン神経細胞ミトコンドリアにはNM(R)Salの光学異性体を認識し,アポトーシスを起動させる分子が存在する可能性がある.NM(R)Sal以外のパーキンソン病発症物質としては tetrahydroisoquinoline,β-カルボリン等が報告されているが,今後はこれら特定の物質に関する研究だけでなく,分子疫学的研究により孤発性パーキンソン病の原因を探究するとともに疾病を予防あるいは防御する治療法,特に経口投与可能な神経保護薬(抗アポトーシス薬)の開発が必要であろう.
  • 津田 誠, 小泉 修一, 井上 和秀
    2000 年 116 巻 6 号 p. 343-350
    発行日: 2000年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
    ATP受容体が痛みの発生と伝達にどのように関与しているかについてその可能性も含めてまとめた.イオンチャネル型ATP受容体のなかでも,P2X3はカプサイシン感受性の小型脊髄後根神経節(DRG)神経細胞に局在し,急速な不活性化を伴う内向電流の発現に寄与し,末梢側ではブラジキニンに匹敵するような痛みを引き起こす.さらに, nocifbnsive behavior および themlal hyperalgesia 発現に関与している事が推測される.脊髄後角ではP2X3はDRG中枢端からのグルタミン酸放出を促進することにより痛み伝達を増強するようである.一方,P2X2とP2X3のヘテロマー受容体は,カプサイシン非感受性のやや中型DRG神経細胞に局在し,比較的緩徐な不活性化を伴う内向電流の発現に寄与する.行動薬理学的にはこのヘテロマー受容体は mechanical allodynia の発現に関与していることが推測されている.なおGタンパク共役型ATP受容体は,痛みとの直接の関与については未だ証明されていないが,それを示唆する状況証拠はかなり蓄積されており,特に病態時の関わりについて今後の研究が待たれる.
  • 大幡 久之, 中山 貢一
    2000 年 116 巻 6 号 p. 351-358
    発行日: 2000年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
    機械受容応答は,様々な細胞において生理的および病態生理学的に重要な役割を果たしていることを示す結果が蓄積されつつある.しかしながら,機械受容分子の実体は今なお明らかではなく,その下流の伝達系路についても不明な点が多い.従って,この機械受容応答の分子機構を明らかにすることは,この機構が関与する様々な生理的な細胞応答や病態の解明に寄与するだけでなく,新たな角度からの創薬への可能性につながるものと考えられる.第73回日本薬理学会年会のシンポジウム14「メカノセンサー機構の実体と機能―新しい視点からの創薬への展望―」では,この分野における次の5つの研究グループの最近の取り組みについて報告し,議論した.1)張力感受性イオンチャネル単離の試み,鈴木誠ら(自治医科大学薬理);2)血管内皮細胞における機械的刺激によるATP放出,大池正宏ら(九州大学大学院医学研究院生体情報薬理);3)リゾホスファチジン酸は機械受容機構の内因性調節物質として働く,大幡久之ら(昭和大学薬学部薬理);4)イヌ脳底動脈における張力発生を伴わない伸展誘発性ミオシン軽鎖のリン酸化について,小原一男ら(静岡県立大学薬学部薬理)及び5)平滑筋形質変換の分子機構,永井良三(東京大学大学院医学系研究科循環器内科).本稿は,このシンポジウムの概要をとりまとめたものである.
  • 丸山 芳子, 長尾 拓, 黒瀬 等
    2000 年 116 巻 6 号 p. 359-370
    発行日: 2000年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
    組換えアデノウイルスは,優れた遺伝子導入効率を持つ遺伝子導入法として, in vitro における培養細胞等での遺伝子発現実験や, in vivo での接種による動物個体での遺伝子機能の解析実験など,基礎研究の分野において様々な目的で広く用いられるようになってきている.その一方で,今まで主に行われてきた哺乳類のパッケージング細胞内での相同組換えを用いる組換えアデノウイルスベクターの作製方法では,作製に多くの複雑な技術と長い期間とが必要であり,作製はそれほど容易なものではなかった.ところが,ここ数年の間に,そのような問題点を解決したともいえる改良された革新的な作製方法が次々と報告され,注目を浴びている.そこで,本稿では今までのように哺乳類のパッケージング細胞内での相同組換えを用いずに,今までの方法よりはるかに簡単に組換えアデノウイルスを作製する方法をとりあげ,そのうちの1つについて実際作製する上でのプロトコールも含めて詳細に述べることにする.
  • 高橋 光一, 岩瀬 信久, 石川 真砂, 水野 博之, 好田 忠行, 甲斐 広文, 宮田 健
    2000 年 116 巻 6 号 p. 371-378
    発行日: 2000年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
    新規システイン誘導体であるフドステイン [(-)-(R)-2-amino-3-(3-hydroxypropylthio)propionic acid] の気道分泌に対する作用をウサギおよびラットを用いて検討した.ウサギにおける気道内色素排泄量を気道分泌の間接的な指標にしたところ,フドステイン500mg/kgの経ロ投与は,気道内色素量を有意に増加させた.一方, Perry and Boyd の変法を用いて,ウサギの気道液を直接的に採取したところ,フドステイン500mg/kgの経ロ投与は,投与3時間後までの気道液量を有意に増加させた.なお,この時の気道液中に含有されるタンパク質およびホスファチジルコリン含量は,有意な変化を認めなかった.次に,気道の漿液性分泌に対するフドステインの作用を検討した.フドステイン500mg/kgの経ロ投与は,ラット気管支肺胞洗浄液中において漿液性分泌の指標であるクロライドイオン濃度を有意に増加させた.一方,カルボシステイン500mg/kgの経ロ投与は,気道分泌に対して影響しなかった.次に, in vitro における検討を行ったところ,フドステイン(10-2M)は粘液溶解作用を示さず,肺胞II型上皮細胞からのホスファチジルコリン分泌に対しても影響を認めなかった.以上,高用量のフドステインは漿液性分泌を伴う気道分泌促進作用を認め,従来のシステイン系去痰薬では認められない作用を有していると考えられる.
  • 鈴木 康裕, 梅村 和夫
    2000 年 116 巻 6 号 p. 379-384
    発行日: 2000年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
    1990年代に入りようやく遺伝子組換え組織プラスミノーゲンアクチベータ(rt-PA)を用いた血栓溶解療法の脳梗塞治療における有効性が示され,脳梗塞治療の糸ロが見えてきた.しかしながら,現在,数種の治療薬において臨床適応が認められているが,満足する効果は得られていない.従って,脳梗塞に対するさらなる治療薬の開発は急務である.候補として抗血小板薬,抗凝固薬,血栓溶解薬,神経細胞保護薬などが開発されている.抗血小板療法では,アスピリンは2つの大規模な国際共同研究が行われたが,有効性は認められたもののわずかなものであった.現在,抗血小板薬である糖タンパク(GP)IIb/IIIa拮抗薬は第II相試験において良好な結果が得られた.抗凝固薬では,ヘパリンとアルガトロバンが急性期脳血栓症治療薬として使用されているが,ヘパリン療法が果たして急性期脳梗塞に有効であるかどうか結論は出ていない.血栓溶解療法は,1992年の我が国や欧米での臨床試験においてrt-PA群は再開通率が高く脳梗塞治療における有効性を示し,その後アメリカでの臨床試験において発症後3時間以内のあらゆるタイプの脳梗塞を対象にしてその臨床的有効性を立証したが,発症後3時間以上での有効性は認められなかった.脳保護薬としては,現在,臨床適応が認められた薬剤はない.NMDA受容体およびAMPA受容体拮抗薬は,数多くの臨床試験が行われているが未だ結論が出ていない.抗酸化剤であるMCI-186とエブセレンは第III相試験が終了しており,日本では良好な臨床結果が得られている.その他,bFGFや抗ICAM-1抗体は第III相試験まで進められたが治療群の成績が悪かったため中止された.現在,開発中の治療薬が臨床試験で有効性と安全性が証明され一刻も早く一人でも多くの脳梗塞患者が改善することを期待する.
  • 小野寺 憲治, 十川 紀夫, 十川 千春, 古田 裕昭
    2000 年 116 巻 6 号 p. 385-395
    発行日: 2000年
    公開日: 2007/01/30
    ジャーナル フリー
    喘息患者は国内においておおよそ380万人程度と推定されており,年々増加傾向にある.1999年における販売実績の分類においてはアドレナリン作動神経β2刺激薬,キサンチン誘導体の販売がそれぞれ35.7%と40.0%を占めており,ついで吸入ステロイドの21.4%,吸入抗コリン薬で2.9%である.1998年に「喘息予防・管理ガイドライン」が成人と小児の患者に対する薬物療法の基準としてまとめて公表された.このガイドラインによればアドレナリン作動神経β2刺激薬と吸入ステロイドを主要薬剤としているため,市場および新薬の開発に変化が起き始めている.喘息治療薬は,治療目的に対応してI)喘息急性発作の薬物治療(relievers)とII)慢性喘息の管理・コントロール(controllers)の2種類に分類される.このような背景から,現在臨床治験中のものを分類し紹介するだけではなく,それぞれの第一選択薬であるアドレナリン作動神経β2刺激薬とステロイド剤の吸入薬に関しては,構造活性相関の面から開発の経緯について解説した.これら主要薬物に関する新薬の開発状況としては,いかに持続的で,副作用が少なく誰にでも容易に取り扱えるかというドラッグデリバリーの工夫,すなわち剤形(ドライパウダーなど)と吸入器の改良,補助器具の開発に焦点が絞られてきている.他方,慢性喘息の長期管理では,気道炎症における新しい化学伝達物質の同定とそれらに対する拮抗あるいは合成阻害作用を有する新薬(抗アレルギー薬)が各種合成され治験中である.その中で,タキキニン拮抗薬の喘息への適応やヒスタミンH3受容体刺激薬(α-メチルヒスタミンなど)の呼吸器領域での臨床応用が期待されている.特に最近,遺伝子組換えによるIgE抗体産生を除去するヒト型化モノクローナル抗体による治療が試みられて来ており,今後,第一線の医療での喘息治療における薬物療法が劇的に変化するものと思われる.最後に,喘息の治療薬の今後の展望について論じた.
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