日本薬理学雑誌
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活性化血小板由来の新規生理活性脂質スフィンゴシン1-リン酸
矢冨 裕
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2000 年 116 巻 supplement 号 p. 2-6

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抄録

スフィンゴシンの代謝産物としてその存在自体は古くより知られていたスフィンゴシン1-リン酸(sphingosine1-phosphate;Sph-1-P)は,近年になり,シグナル分子として多彩な細胞応答を惹起することが明らかにされた.血小板は,そのスフィンゴ脂質代謝の特異性から,Sph-1-Pを豊富に含み,活性化に伴ってこれを細胞外に放出する.この活性化血小板由来のSph-1-Pは,血小板自身または血管を構成する細胞に作用し,オートクリンまたはパラクリン的に血栓・止血・動脈硬化などの反応に関わると予想される.これらの多彩なSph-1-Pの作用の大部分は, Endothelial differentiation gene ファミリーと呼ばれる,G蛋白質に連関する細胞表面受容体を介するものと考えられている.Sph-1-Pにより惹起される血管生物学的細胞応答,それに関与する受容体と下流の情報伝達を明らかにしていくことは,血管疾患の治療薬の開発につながると考えられる.

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