抄録
クラスIII抗不整脈薬およびQT延長作用が報告されている非循環器用薬剤の催不整脈作用を分析した。まず、セマチリドの催不整脈作用をイヌ摘出血液灌流心室筋標本を用いて評価した。セマチリドは単相性活動電位持続時間(MAP90)および有効不応期(ERP)を用量依存的かつ逆頻度依存的に延長した。刺激頻度が遅いほど、相対不応期の延長も増大し、期外刺激により多型性心室頻拍(TdP)が誘発された。血液灌流心室筋標本はクラスIII作用を有する薬物の電気生理学的作用だけでなく催不整脈作用を検出するモデルとしても利用できること、また、相対不応期の延長は催不整脈作用を定量的に評価するための指標として利用できることが示された。次に、薬物の電気生理学的作用をハロセン麻酔犬を用いて評価した。クラスIII抗不整脈薬(ドフェチリド、ニフェカラント)は、陰性変時作用、再分極過程および有効不応期の延長作用を示したが、他の心血管系の測定項目にはほとんど影響を与えなかった。一方、非循環器用薬剤(シサプリド、スルピリド、ハロペリドール、スパルフロキサシン)は、上記の作用以外に陰性変力、変伝導作用や血圧低下作用も示した。いずれの薬物も、相対不応期を心周期の後方へ移動させると同時に延長したので、この作用が各薬物の不整脈源性基質の一部であると考えられた。最後に in vivo における薬物の催不整脈作用を慢性完全房室ブロック犬を用いて評価した。クラスIII抗不整脈薬としてセマチリド、ニフェカラント、非循環器用薬剤としてシサプリド、テルフェナジン、スルピリド、スパルフロキサシンを無麻酔状態で経口投与した。臨床使用量ではTdPの発生は観察されなかったが、その5-40倍量投与後、TdPがすべての薬剤で誘発された。慢性完全房室ブロック犬は薬物による催不整脈作用を評価するための検出感度の高いモデルとして有用であることが示された。