日本薬理学雑誌
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Amylopectin Sulfateの蛋白分解酵素阻害作用
石井 靖男古田 康彦田中 建志美野輪 雅子
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1974 年 70 巻 4 号 p. 507-514

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抄録

Amylopectin sulfate(APS)の消化管内蛋白分解酵素阻害作用および抗潰瘍作用について検討し次の成績を得た.1)APSはin vitroでpepsin,trypsin,chymotrypsinの作用を阻害する.pepsinに対してはAPS濃度が増加するに従い阻害度:も増加し100%阻害を示すが,trypsin,chymotrypsinに対する最高阻害度は60~70%である,2)色素法によるAPSと蛋白の結合実験ではpH3,APSと蛋白混合比1:5の条件下ではAPSはhemoglobinと一番強い親和性を示し以下trypsin,chymotrypsin,pepsinの順であった.3)電気泳動法による膜上交差実験ではpH1.8ではAPSは基質,pepsinのいずれとも親和性を示したが,pH7.8ではtrypsin,chymotrypsinの酵素とのみ親和性を示した.4)以上の結果からAPSの抗pepsin作用は酵素,基質のいずれとも結合することにより生じるが,抗trypsin,chymotrypsin作用は酵素を結合することにより阻害作用を示すと考えられる,5)APSはShayrat法による潰瘍発生を強力に抑制し胃液のpepsin活性を低下させたが,ストレス負荷Shayratの腺胃部エロジオンに対しては抑制を示さなかった.

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