日本薬理学雑誌
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70 巻, 4 号
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  • 石井 靖男, 古田 康彦, 田中 建志, 美野輪 雅子
    1974 年 70 巻 4 号 p. 507-514
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Amylopectin sulfate(APS)の消化管内蛋白分解酵素阻害作用および抗潰瘍作用について検討し次の成績を得た.1)APSはin vitroでpepsin,trypsin,chymotrypsinの作用を阻害する.pepsinに対してはAPS濃度が増加するに従い阻害度:も増加し100%阻害を示すが,trypsin,chymotrypsinに対する最高阻害度は60~70%である,2)色素法によるAPSと蛋白の結合実験ではpH3,APSと蛋白混合比1:5の条件下ではAPSはhemoglobinと一番強い親和性を示し以下trypsin,chymotrypsin,pepsinの順であった.3)電気泳動法による膜上交差実験ではpH1.8ではAPSは基質,pepsinのいずれとも親和性を示したが,pH7.8ではtrypsin,chymotrypsinの酵素とのみ親和性を示した.4)以上の結果からAPSの抗pepsin作用は酵素,基質のいずれとも結合することにより生じるが,抗trypsin,chymotrypsin作用は酵素を結合することにより阻害作用を示すと考えられる,5)APSはShayrat法による潰瘍発生を強力に抑制し胃液のpepsin活性を低下させたが,ストレス負荷Shayratの腺胃部エロジオンに対しては抑制を示さなかった.
  • 堤 璋二, 薄井 康弘, 松本 仁人
    1974 年 70 巻 4 号 p. 515-522
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    体重100g内外のWistar albino ratを,粉乳を主成分とした飼料あるいは雑穀を主成分とした飼料で35日間飼養したものを対照群とし,各対照群に,1日650ppmの三酸化ヒ素を添加し連日35日間投与飼養したものを実験群とし,各群の飼料摂取量,体重増加の状態およびラットの肝,脳,腎におけるコハク酸脱水素酵素活性を測定し,ヒ素による影響を調べた.1)飼料摂取量および体重増加については,各群間に統計的有意差を認めなかった.2)コハク酸脱水素酵素活性の変動は次の通りである,(1)肝1g当りの活性値は,各群とも経時的にほぼ直線的に増加し,粉乳飼料の対照群に対し,ヒ素添加の実験群の活性値は約4/5に抑制した.雑穀飼料の対照群の活性値に対しては実験群のそれは約2/3の活性低下が現われた.肝全体当りの活性値は,それぞれ約3/4および約1/2とさらに強く低下した.(2)脳1g当りおよび脳全体当りの活性値については,粉乳飼料の対照群の活性値に対して,ヒ素添加の実験群のそれはわずかに低下を示したのみであったが,雑穀飼料の対照群に対しては,実験群の活性値は約1/2に低下した.(3)腎1g当りおよび腎全体当りの活性値は,粉乳飼料または雑穀飼料においても,対照群の活性値に対し,ヒ素添加の実験群のそれはいずれも約4/5の活性低下が現われた.3)各飼料群に,ヒ素を添加投与した場合,ラット各臓器内のヒ素含有量は,雑穀飼料群に比して,粉乳飼料群の方が明らかに減少するが,ヒ素による各臓器のコハク酸脱水素酵素活性の抑制度は,各臓器によって異なり,しかも,ヒ素含有量とは必ずしも比例しないことから,ヒ素に対するこの酵素の反応には,臓器特異性が存在するようである.
  • 守下 秀治, 古川 達雄
    1974 年 70 巻 4 号 p. 523-530
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    イヌ股動脈条片について,その一般的性質を吟味し,さらに諸種薬物の作用を検討した.1)イヌ股動脈条片は固有緊張を保持し,自発性の律動的収縮を示さない.等張性に記録して,条片に49の負荷をかけると,条片は徐々に伸長して,指数函数的曲線を描き,その緊張は1.5~3時間でほぼ一定となる.収縮剤の作用はそれに伴って強く現われるようになり,反応性は1.5~3時間で最大となり,その後は7時間位まで一定である.2)Adrenaline,noradrenaline,dopamine,tyramine,ephedrineはこの順序の作用強度で,すぺて収縮を起こし,その収縮はphenoxybenzamineで完全に除かれる.isoprenalineは低濃度では弛緩,高濃度では収縮を起こし,弛緩はpropranolo1で,収縮はphenoxybenzamineで完全:に除去される.3)Acetylcholineはいかなる濃度でも弛緩を起こし,この作用はatropineと拮抗する.KClは強い収縮,histamineは弱い収縮を示す.以上のように,イヌ股動脈条片はウサギ大動脈条片に比べ,収縮作用のみでなく,弛緩作用も現われ,その反応性は生体における薬物の作用にきわめて類似している,したがって,薬物の血管に対する作用を検討するのに適した実験材料と考えられる.
  • 渡辺 繁紀, 川崎 博巳, 西 広吉, 植木 昭和
    1974 年 70 巻 4 号 p. 531-542
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    慢性電極植込みウサギを用いて,行動観察と同時に脳波ならびに大脳辺縁系後発射に対するID-690の作用をdiazepamのそれと比較した.ID-690は,0.05~0.2mg/kgの少量投与でウサギは鎮静状態を示し,これにともなって,脳波は全:般的にdrowsypatternとなり,皮質,扁桃核では高電圧徐波,海馬ではφ波の脱同期化がおこる.この場合,とくに皮質において高電圧徐波の上に速波成分(β波)が重畳するのが特徴である.これらの作用はdiazepamでも全く同様であるが,ID-690の方がはるかに強力である.音刺激による脳波覚醒反応は.ID-690によって著明に抑制される.また,中脳網様体および後部視床下部刺激による覚醒反応もID-690によって抑制されるが,この場合,後部視床下部刺激による覚醒反応の抑制がより強かった.diazepamの作用も質的には全く同様であるが,ID-690の方がはるかに強力である。閃光刺激によって後頭葉皮質に誘発される電位(photic driving response)は,ID-690およびdiazepamによってほとんど影響を受けない.漸増反応(recruiting response)は,ID-690,diazepamによってごく軽度に増強される.海馬,扁桃核の刺激による後発射(after-discharges)は,ID-690,diazepamのいずれによっても著明に抑制されるが,作用はID-690の方がはるかに強力である.以上,ID-690の脳波ならびに大脳辺縁系後発射に対する作用は,質的にはdiazepamに類似しているが,その作用はdiazepamの約10倍強力である.
  • 藤村 一, 鶴見 介登, 平松 保造, 呉 晃一郎, 中野 万正, 渋谷 具久
    1974 年 70 巻 4 号 p. 543-569
    発行日: 1974年
    公開日: 2007/03/29
    ジャーナル フリー
    Ketoprofen〔2-(3-benzoylphenyl)-propionic acid〕の抗炎症作用ならびに鎮痛下熱作用を経口投与により試験した.このものは化学的,物理的,生物学的な各種起炎性刺激によって惹起された血管透過性充進ならびに急性浮腫に対して同程度の平行した抑制作用を示し,indomethacinとほぼ同等でphenylbutazoneの約10倍の効力を示し,急性炎症に対して強力な抑制作用を有することが認められた.紫外線紅斑に対してもindomethacinと同等の抑制効果を示し,mustardによる持続性浮腫に対してはそれより強力であったが,肉芽増殖に対する抑制作用はindomethacinよりわずかに弱かった.しかしそれでもphenylbutazoneの10倍程度の抑制効力を示し,adjuvant関節炎に対しても明らかな予防的治療的効果を示した.従ってKetoprofenは急性慢性の炎症反応に対してindomethacin程度の強力な抑制作用を有することが認められたが,慢性炎症に対してはやや弱いかもしれない.なおこの抗炎症作用は副腎を介するものではなく,またステロイド様作用でもなく直接作用によるものと思われ,胃潰瘍発現効果は抗炎症効果とほぼ比例した作用を示し,従来の酸性非ステロイド抗炎症薬と同様な範疇に属するものではあったが効力が強い点が特徴であった.他方Ketoprofenはかなりの鎮痛下熱作用を有し,bradykininに対して拮抗作用を有することは酸性抗炎症薬として既知薬物にはみられない利点であり,また軽度ながら尿酸排泄促進作用も期待されるところから新しい非ステロイド抗炎症薬として臨床上価値ある薬物と思われる.
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