日本薬理学雑誌
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Ketoprofen(19583RP)の薬理学的研究 第二報 一般薬理作用
藤村 一鶴見 介登平松 保造呉 晃一郎中野 万正渋谷 具久
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1974 年 70 巻 6 号 p. 801-818

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抄録

Kletoprofenは強力な抗炎症作用を有し,鎮痛下熱作用も比較的強いのでその一般薬理作用を試験した.Ketoprofen投与により外観上異常症状を認めなかったが,自発運動を軽度減少させ,協調運動もわずかに障害した.Hexobarbitalおよびbarbitalの睡眠作用にも協力効果を示したがごく弱いものであった,その協力はphenylbutazoneのように代謝面からの協力ではなく,多分indomethacinと同様中枢抑制作用からの協力と思われたがilldomethacinに比しかなり弱いものであった―従ってketoprofenは中枢神経系に対して抑制的に作用するもののごく軽度なもので,抗炎症作用用量にてはほとんど影響のないものであった.呼吸循環系に対しても大量の静注で心拍動を抑制し,血圧血流量をわずかに低下させ,呼吸は促進から抑制的になったが,極めて大量の場合で抗炎症作用用量では全く影響がなかった.腎に対しては尿量を減少させ,尿中電解質排泄量も減少したが,ketoprofenのみに特有な作用ではなく他の既知酸性抗炎症薬すべてに認められる性質であった.気管,子宮および輸精管などにはほとんど作用せず,横隔膜収縮に対しても高濃度で抑制するのみで,平滑筋および骨格筋にもほとんど影響しなかった.自律神経系にも作用なく,catecholamineやacetylcholineの作用にも影響しなかった.その他histamineや5-HTおよびbradykininに対しても拮抗作用はなく,BaCl2の腸管収縮にも影響しなかった.さらに血液凝固や血糖値にも影響せず,局所刺激作用もほとんど認められなかった.以上の結果からketoprofenは抗炎症作用用量にては尿量減少以外明らかな薬理作用はなく,既知抗炎症薬と同様な作用物質と思われた.ただ大量では中枢抑制および呼吸循環系に対する影響が認められたが,大量投与による中毒症状と思われる.

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